移籍は自分自身が成長できるチャンス
開幕1ヶ月が経った11月8日の信州ブレイブウォリアーズ戦に快勝した後、「もう新加入ではない。チームの一員としてなじんでいる」と佐藤賢次ヘッドコーチは、今シーズンより川崎ブレイブサンダースに加わった4選手に賛辞をおくる。ロスコ・アレン、トーマス・ウィンブッシュ、飯田遼、そして今回の主役である野﨑零也。キャプテンの篠山竜青は、ともに28歳の日本人選手たちに対し、「ディフェンスのメンタリティの土台がやっぱり違う。本当の意味での即戦力」と歓迎し、期待以上の活躍を見せている。
「零也の “零” はゼロであり、『何ごとも零からスタートすれば良い』という由来で親が名付けてくれました」とその期待に沿うように、野﨑は3度目の移籍へと踏み切った。ルーキーシーズンを送ったファイティングイーグル名古屋から群馬クレインサンダースへ、その後ふたたびFE名古屋へ戻り、昨シーズンはじめてB1を経験。そして今シーズンより、川崎へ迎えられた。移籍を決めたきっかけについて、野﨑はこう語る。
「川崎に行ってまた零からスタートすることができ、いろんなバスケットを知りたいと思った。名がある選手、名門チームでプレーできるチャンスもそうないことなので、自分自身が成長できるという気持ちが強かったです」
新たな環境に溶け込むのは簡単なことではない。長く在籍し続ける選手が多い川崎であれば、なおさらである。「シーズン前の天皇杯、そして開幕の三遠(ネオフェニックス)戦はどうすれば良いかすごく悩んでいました」と野﨑は振り返る。同期であり、同じく移籍組の飯田とは頻繁にその不安や悩みを共有し、コーチやスタッフに相談しながら解決の糸口を探す。その悩みはスペーシングの部分であり、主にオフェンスにあった。
「このチームにはニック(ファジーカス)や(藤井)祐眞さん、3人の外国籍選手(ジョーダン・ヒース、ウィンブッシュ、アレン)も含めて点数が獲れるところはいっぱいあります。そこで自分がどうスペーシングを取れば良いのかを考えることがすごく多かったです」
その不安を払拭するための解決策は、ディフェンス・ファースト。飯田やコーチ陣と試行錯誤する中で、「求められているベースはやっぱりディフェンス。そこをまずはやらないといけない」と原点に立ち返る。今年7月の加入会見時、北卓也GMは「ディフェンスでスイッチしたときにスモールになっても、野﨑選手と飯田選手はフィジカルが強く、外国籍選手とマッチアップをしても相手のバランスを崩すディフェンスができる」ことに期待していた。野﨑も「ディフェンスで川崎ブレイブサンダースに勢いをもたらせていきたい」と所信表明したとおり、持ち味を出して信頼を勝ち獲ることに振り切った。
「シュートは水物なので、入らないことでクヨクヨしていたら、ディフェンスにも影響してしまいます。ディフェンスでハッスルすることで自分自身が乗ることができ、ベンチも盛り上がる。そこから良いオフェンスが生まれると思っているので、ディフェンス・ファーストを意識しています」