レベルの高いバスケに飢えていた府大会2回戦ボーイ
試合前、黙々とハンドリングドリルをする選手の姿に目が止まった。ファンブルし、コートの外に出るボールを追いかけていく。191cm、大阪体育大学で一番大きな #23 リヴァース怜央はまだ1年生である。
バスケをはじめたきっかけは、「小学校3年のときに大阪エヴェッサのスクールに通っていました」。その後、地元の中学と高校でバスケを続けてきた。藤井寺高校は、「僕らの代で大阪ベスト32。府大会で2回戦程度でした」というリヴァースにとって、インカレ(第75回全日本大学バスケットボール選手権大会)が初の全国大会である。
大阪体育大学の比嘉靖監督が、リヴァースを見つけたのは彼が高校2年のとき。大学の先輩が、たまたま藤井寺高校へ赴任した年に紹介された。コロナ禍で制限ある時期だったが、すぐさま練習を見に行った。夏の時点で184cm、その後の春休みに「身長が伸びた」とふたたび連絡を受ける。大学の練習に参加させたところ、「当たり負けしても楽しそうにバスケをしていました。たぶん、レベルの高いバスケに飢えていたんだと思います」と比嘉監督は感じ取る。その後も何度か練習に参加したリヴァースは、高校とは違うレベルや強度に魅了されていく。保護者と高校の先生に自分の希望を伝え、晴れて進学が決まった。
今シーズンを終え、比嘉監督は「自分よりもスキルのある選手や、体の大きい選手と本格的に対戦するのは大学に入ってからであり、すべてがはじめての経験でした。その中でもバネを活かした高さあるプレーやショットブロックの感覚、1on1を狙うドライブなど楽しみな部分も多い選手です」と期待値は高い。ポジションに固執することなくいろんなことに挑戦させ、スポンジのごとくどんどん吸収している。ともに190cmの #5 仲田泰利と #25 市原修也の4年生たちの存在も大きく、成長できた1年となった。
はじめての全国の舞台に立ったリヴァースは、「しっかりと楽しみながら、自分の力を最大限出すことを意識していました」と目的を持って2試合に臨み、今持てる力を発揮する。
グループステージ初戦、日本経済大学に第3クォーターで13-29と引き離され、73-96で1敗目。2mを超える選手に対し、アンダーサイズのリヴァースが体を張った。「相手は大きくパワーも強いですが、小さいなりに相手をどう嫌がらせて、やりたいことをさせずにディフェンスすることを意識していました」と話すとおり、対抗する場面も見られた。8本のリバウンドはチームハイ。勝てなかったので納得こそしていないが、手応えも感じられるデビュー戦だった。翌日の星槎道都大学戦は85-58で初勝利の喜びを味わうこともできた。しかし、1勝1敗でグループステージ敗退となり、リヴァースのファーストシーズンが終わった。