「B1優勝を狙えるチームだと思います」
過去に2シーズンB1でプレーし、その2シーズンはいずれもリーグ制覇。そんな選手がこのセリフを口にすると説得力が違う。筑波大でインカレ3連覇を果たし、その後Bリーグを経て、オーストラリア・NBLでもメルボルン・ユナイテッドのリーグ優勝に貢献。馬場雄大は、ファン・ブースターの間では “優勝しかできない男” とまで言われることもある。
自国開催のワールドカップでの活躍は、多くの人が承知の通り。その興奮も冷めやらぬ9月26日に、長崎ヴェルカとの契約が発表された。現役日本代表選手の獲得はクラブ初。これまで事業・強化両面で界隈を驚かせ、史上最速でB1昇格を果たした長崎にとっても、これは会心の一撃だっただろう。
その長崎は、昇格早々開幕4連勝とこの上ないスタートを切った。ホームで迎えた開幕節で昨シーズン準優勝の千葉ジェッツを連破し、第2節では富山グラウジーズを圧倒した。合流して間もないということもあり、馬場は千葉J戦ではベンチ登録を外れたが、富山戦で5シーズンぶりにBリーグのコートに立つと、第1戦は17得点、第2戦は代名詞のダンク2本を含む15得点。再デビュー戦としても上々の結果だった。
長崎に初めて土がついたのが、10月21日に開催された第3節の第1戦。立ち上がりで8-0のランを見せるなど先手を取り、前半は51-40と開幕戦からの勢いを感じさせる戦いぶりだったが、後半は相手のアジャストに対して後手に回り、オフェンスが沈黙。無念の逆転負けを喫した。
ただ、馬場が冒頭のコメントを発したのはこの試合の後のことだ。トム・ホーバスヘッドコーチ率いるワールドカップ日本代表のスタイルもそうだったが、長崎も5アウトをベースにした戦い方。それが自身のプレースタイルに合っているという手応えも含め、「タレントも揃ってますし、B2から来たようなメンバーでもない。相手がどうこうというよりは自分たち次第で、伸びしろだけなのでワクワクしてます」と自信をのぞかせる。「ただ成功だけでは上に行けない。こういった試合は、上に行くためには絶対に必要」という考えも、勝つ経験を重ねてきた中で身につけてきたものだろう。
その経験をともにしてきたかつての仲間がいたことも、馬場にとっては深い感慨があった。対戦相手のサンロッカーズ渋谷を率いるのはルカ・パヴィチェヴィッチHC。小島元基は故障のため欠場したが、田中大貴とはマッチアップする時間帯もあった。3人とも、連覇したアルバルク東京時代のチームメートだ。8得点止まりだった馬場に対し、田中は3ポイントを5本中4本炸裂させるなどして18得点。「奮い立たせられました。敵なんですが、良い関係で張り合えている」と、馬場は刺激を与えられたようだ。
“優勝しかできない男” というキャッチコピーは、時として “持ってる男” と言い換えることもできる。海外挑戦の前に最後にBリーグでプレーした試合は、自身がMVPに輝いた2018-19シーズンのチャンピオンシップファイナル。その相手だった千葉Jと開幕戦で対戦し、第2節で訪れた富山は馬場の地元。そして第3節が、縁の深い戦友がいるSR渋谷だった。まるで馬場のために試合日程が組まれたかのような、不思議な巡り合わせだ。