「自分よりも低い身長でも世界であれだけプレーできているのがすごい」
開幕戦で日本を破ったドイツが負けなしのまま世界一となり、FIBAワールドカップは幕を閉じた。2000年生まれの選手たちが活躍し、その最先端にいるのがNBAである。決勝トーナメントに進んだ8強のうち、アメリカが一番多い4人を数える。ファイナリストとなったドイツのフランツ・ワグナー(オーランド・マジック)は22歳、セルビアのニコラ・ヨビッチ(マイアミ・ヒート)はさらに若い20歳らが、存在感を示していた。
日本代表でも河村勇輝(横浜ビー・コルセアーズ)と富永啓生選手(ネブラスカ大学4年)の2001年生まれの2人が頭角を現し、パリオリンピック出場権獲得の原動力となった。日本大学の米須玲音と同じく、東海大学4年の黒川虎徹も「やっぱり悔しさがあります」と、そんな同世代の選手たちをライバル視する。昨年から日の丸をつけて戦うかつての仲間に対し、「大学1〜2年生で一緒に練習をしてきた勇輝が活躍するのはうれしいし、自分よりも低い身長でも世界であれだけプレーできているのがすごいです」とその活躍を喜ぶ。一方で悔しさも込み上げ、複雑な感情を抱いていたことが日本の底上げになると期待している。
コロナ禍が明けた今年は、学生たちにとっても国際経験を積む機会が多かった。黒川は第44回李相佰盃日韓学生バスケットボール競技大会での韓国戦をはじめ、ユニバーシティゲームス、Sun Chlorella presents World University Basketball Series 2023(以下WUBS)、ハワイ大学とのエキシビションゲームなどに出場し、海外のチームからたくさんの刺激を受ける。
「今までの自分のプレースタイルは、ゲームメイクといってもコントロールするだけだったんです。でも、それが世界を体感したことで、ボールプッシュをしてリングまでアタックしたり、3ポイントシュートを積極的に打ったりしていかないといけないと思わされました。それが、世界を経験してガラッと変わった部分です」
関東大学オータムリーグは7試合を終え、そのうち4回二桁得点をマーク(9月10日現在)。得点力向上だけではなく、持ち前のコントロールの部分でも成長が見られる。
「体を当てられても、ある程度はボールを取られないようになりました。また、ボールキャリーしながら、自分から積極的に体を当てていくことも、今まではちょっとソフトでしたが、強く当てていかなければ世界では通用しないということが多かったです」
「ディフェンスとゲームメイクでは絶対に負けていない」強みにプラスして河村勇輝の良い部分を盗んでいきたい
U22日本代表など選抜チームの一員として国際大会に出場しただけではなく、東海大学として臨んだWUBSも大きな学びとなった。優勝した台湾の国立政治大学と1回戦で相まみえ、73-81で敗れたが黒川は22点を挙げた。その後の順位決定戦では高麗大学校(韓国)、ペルバナス・インスティテュート(インドネシア)に勝利し、結果は5位。様々なスタイルのチームとの対戦を通じて、「海外の選手はコンタクトされてもボールを失わないですし、ファウルされても審判に言うのではなく、チームでしっかりハドルアップしていたのが日本との差だと感じました」という黒川は、相手の良い部分を積極的に取り入れている。