日本バスケット界には様々な血縁関係が存在するが、Bリーグでは2017-18シーズンから続いている田渡修人(サンロッカーズ渋谷)と凌(熊本ヴォルターズ)の兄弟関係に、2人の父・優氏を交えた親子関係がこの度加わった。
越谷アルファーズの青野和人GMは、選手だけでなく桜木ジェイアールスーパーバイジングコーチや安齋竜三アドバイザーなどコーチ陣にもビッグネームを招聘している一方で、ユースチームダイレクターを兼務してアンダーカテゴリーの組織作りにも力を入れており、今回優氏をユースチーム総監督として迎え入れるに至った。優氏が京北中・高(現・東洋大京北)を幾度も全国上位に導き、トップリーグに多数の選手を送り込んできた大物コーチであることはよく知られているところ。越谷はまたも大型補強を施したというわけだ。
長兄・敏信氏(元・東京サンレーヴス)を含めた田渡3兄弟も、京北中・高で父の薫陶を受けてきた。その中で、今シーズンB2に舞台を移した三男・凌は、初めて父との “直接対決” を迎えることとなった。2月11・12日、アウェーの地・越谷市立総合体育館。もちろん父は相手ベンチではなく、母と並んで観客席に座り、そのプレーを見守った。
この節を迎える時点では、熊本の勝率が.595だったのに対し、越谷は.757。12月の対戦でも連敗している熊本の苦戦を予想する人は少なくなかっただろう。しかし11日の第1戦は、第2クォーターに越谷のターンオーバーやシュートミスからトランジションオフェンスを繰り出した熊本が試合を優位に進め、79-66で勝利。ベンジャミン・ローソンの欠場に加え、第3クォーター途中でテレンス・ウッドベリーもベンチに退く状況だったにもかかわらず、東地区首位争いを演じる越谷に土をつけてみせた。
劣勢に回った時間帯はあった。第3クォーターの立ち上がり、約2分間で0-9のランを許し、前半終了時の16点差を7点差まで詰められた場面だ。そこでチームを救う働きを見せたのが田渡。残り7分31秒に投入されると、ゴール下でパスを受けたアイザック・バッツのボールをスナップしてマイボールにし、直後に磯野寛晃の3ポイントをアシスト。松山駿のレイアップをブロックしたかと思えば、ピック&ロールからプルアップジャンパーも決めてみせるなど、攻守にわたってチームを勢いづけた。この活躍を、田渡自身は以下のように振り返る。
「バッツ選手のところにアタックして、そこからチャンスを作っていこうという中で、前半は2本シュートを打ったんですが、それが決まらず、でもその姿勢は崩しちゃいけないと思っていたので、後半も変わらずアタックし続けようと意識して入りました。ただ、それよりもディフェンスで流れを作っていこうという意識のほうがメインで、その時間帯に出ていた5人でしっかりエクスキュートできたと思います」
熊本には田渡の他に長島蓮、神里和、山本柊輔と3人のポイントガードがいるが、この試合では山本柊輔以外の3人の出場時間がいずれも14分台と、きれいにタイムシェアされた。その中で田渡は、「結果を出さないとプレータイムを獲得できない」という意識を常に持ちながら取り組んでいる。この日のパフォーマンスは、その意識が形となって表れた。
「どんどんアピールしていかないと試合に出るチャンスが減っていってしまうという危機感を持っています。今日は、前半に持ち味を出せなかった部分を後半はしっかり出してチームに貢献しようという気持ちで挑んで、それが良かったと思います」