過去に5度、日本車いすバスケットボール選手権大会の決勝まで上り詰めたNO EXCUSEは、6度目の挑戦となった今回も頂点には届かなかった。しかし、表彰式の後にメディアの取材に応じた香西宏昭の表情は、どこかすっきりとしたような晴れやかなものだった。そういえば、香西は試合前も、試合中も、そして悔しかったはずの表彰式も笑顔を見せることが多かった。
約3年半ぶりの開催となった今大会は、男子日本代表が銀メダルを獲得した東京パラリンピック後では初めての開催。世界一に肉薄した選手たちを見ようと、多くの人が東京体育館に足を運んだ。入口付近にはパラリンピックの写真パネルが大々的に展示され、1年4カ月前の記憶が蘇った人も少なからずいたことだろう。
注目を集めたのはやはり、パラリンピックに出場した選手たち。中でも決勝は、高確率の3ポイントで世界を驚かせた香西と、銀メダルにもかかわらず大会MVPに輝いた鳥海連志の対決とあって、相当な注目を集めた。試合内容は泉誠一氏の記事に詳しいのでここでは割愛するが、鳥海と古澤拓也という2人の銀メダリストを擁するパラ神奈川スポーツクラブがロースコアの接戦を制し、22大会ぶり4度目の優勝を果たした。U23世界選手権で世界の頂点に立った鳥海が再びチャンピオンとなり、香西はまたも涙を飲むということになったわけである。
しかしながら、香西は多くの観衆の前でプレーできたことをまず喜んだ。リーグの環境が整備されたドイツで長くプレーしてきた香西にとって、会場が熱気に包まれたのは心から嬉しいことだったようだ。
「僕たちの試合以外はわからないですが、例えばこの決勝戦だったら僕たちのファンはオレンジの服を着て、パラ神奈川のファンは赤い服を着ているというのがすごく良い画だなと感じました。こういう中でプレーできるのはすごく光栄なこと。選手としてはもうちょっと多く試合をしたいので(笑)、これが天皇杯という大きな大会だけではなく、ファンの方々に見てもらいながらできる環境がもっとあるといいなと思います。
ドイツはチームにファンクラブがあって、うまくいかなかったら野次られるみたいなこともあるんですよ。そういう中でやるとやり甲斐があるというか(笑)、引き締まるというのがあるし、応援してもらってるから頑張らなきゃというのもある。今回こういう中でプレーできて幸せだったし、楽しかったです」
アスリートである以上、勝負にこだわるのは当然のこと。香西も、もちろんチームも勝つための準備をしてきた。香西によれば、今大会は「なかなか自分たちの思うようにいかないであろうと予測をしつつ、それに対応していくという形でやってきて、それがうまくいったときもあれば、うまくいかないときもあって、でも自分たちはとにかくそれをやり続けようとしました」と、自分たちのやるべきことにフォーカス。結果として勝利という栄誉はついてこなかったが、コロナ禍などの困難を乗り越えてきたことも踏まえ、一定の達成感はあるということだ。