周りを生かし続けて16年。
太田敦也は38歳のシーズンを戦っている。
近年では選手の高齢化が著しいためさらなる年長者も少なくないが、それでもいよいよ大ベテランと呼ぶにふさわしい年齢となってきた。
一方で、かつては掃いて捨てるほどいた同い年が次々と目の前から姿を消していった。
それは太田にとって不思議な光景だった。
「タイジ(酒井泰滋)、タケ(正中岳城)とか、あとうっちゃん(内海慎吾)か。あのあたりが引退するってなったときは『えっ』って思ったよね、やっぱり。自分自身がそんなふうに(引退しようと)全く思ってないから。あー、辞めちゃうんだ、っていう感じにはなる。」
自分の意思で選手を終わりにする選択が「全くよぎらない」という太田。
彼にはコートを去っていく馴染みの顔たちから、プレーヤーとしての価値が失われてしまったとはとても思えなかった。
それぞれに事情があっての決断だということは、わかる。
でも、やれるんだったらやったらいいのに。
いなくなってしまうと、気持ちの上がりかたも違ってきてしまうから。
「(フェニックスが求め続けてくれる以上は)もう何年でもやるよ。身体が動くんだったら。折茂さん(折茂武彦、レバンガ北海道代表取締役社長)みたいにやれるとは思わないけど、でもやれる限りはやりたいなと思う。」
大レジェンドを比較対象として見るにはまだまだ先の長い話だが、38歳になっても「そこまで衰えを感じていない」という太田は、はたから見ていても劣化が少ない。
まだまだ若手に当たり負けなんてしない。
最近ではオールラウンドな活躍を見せるビッグマンの台頭が著しいが、「センターの役割」を重要視する太田は、自身の強みを貫き通す。
「スリーを打ちたいな、とか、決めたら気持ちいいだろうな、とは思うけど、下手くそだからって割り切ってるところもある。その代わり、身体を張れるっていう、自分の丈夫な身体っていう武器はあるから。
いろんな攻撃の選択肢があるのは魅力だけど、やっぱりセンターってゴール付近の攻防が多いから、そこで身体を張れる、突っ込んでくる相手を止められるっていうことが一番必要かなと思う。」
若く、器用なビッグマンと試合でマッチアップする時間帯は「コンタクトしなくていいから休める」と語るほど、太田はこれまで外国籍選手との激しいぶつかり合いの中で生き抜いてきた。
本人曰く、「だんだん寝ても疲れが取れなくなってきた」とのことだったが、筆者などは寝て疲れが取れたことなどない選手生活を13年ほど続けてきたので、案外太田は50歳までやってるような気がした。