インカレが終わると、Bリーグでは特別指定選手獲得が各クラブから続々と発表される。昨シーズンはウインターカップ期間中の発表だったWリーグのアーリーエントリーも、今シーズンは早々に情報解禁。未来の日本バスケット界を担う有望株が一足早く次のステージに進むことに、ファンも胸を躍らせる。
言うまでもないことだが、このタイミングで発表された選手だけが国内最高峰の舞台にステップアップするわけではない。有名大学の花形プレーヤー以外でも、プロの舞台を夢見て日々努力してきた選手は少なからずいる。新潟経営大4年の棚橋恒介は、他の選手とは少し異なる道を歩んでプロの舞台に近づこうとしている選手だ。
今回から大会の方式が変わり、3年ぶりのインカレ出場となった新潟経営大はグループステージからの出場。少なくとも2試合を戦うことができるようになったのだが、初戦は初出場の浜松学院大に9点差で敗戦。その浜松学院大が2試合目も勝ったことで、新潟経営大はグループステージでの敗退が決まった。12月6日の東海大札幌キャンパス戦が、棚橋にとっては大学生活最後の試合。棚橋はチームメートに声をかけ、選手だけでミーティングを開いた。
「新チームができるときに、『勝ち負けももちろん大事だけど、最後にこのチームで1年やってこれて良かったって思えるようなチームにしよう』という話をしてスタートしたんです。欲を言えばもう1試合みんなと試合したかったけど、チームとして掲げていたそういう目標があったので、最後の40分間それを体現しようぜって言いました。みんな引き締まった感じで、良い流れでゲームに入れましたね」
第1クォーターで18-9、第2クォーターも14-9とディフェンスで試合の主導権を握った新潟経営大は、後半こそ相手の3ポイント攻勢にやや手を焼いたものの、試合を終始優位に進めた。キャプテンとしてチームを引っ張る棚橋も、「3ポイント以外は全部止めてたんで、他をしっかり止めた上で3ポイントを決められるのは、うちにとっては全然マイナスにはならなかった。相手のシュートは入ってたんですけど、自分たちのディフェンスは変えずにやりきりました」と、おおよそ狙い通りのバスケットができたという実感を持つ。その上で棚橋は「どちらかというとディフェンスよりも、前半イージーシュートが落ちていたので後半は僕が攻め方を変えて、パスで展開できた」と、オフェンス面で前半の戦い方から冷静に反省点を洗い出した。後半は47失点を喫したが、得点も47点。相手にシュートを決められても、落ち着いたゲームコントロールで相手に流れを渡さなかった棚橋は、最後のタイムアウトでチームメートに檄を飛ばし、チームに有終の勝利をもたらした。