「快成がいなくなったから負けたってのはお前らダサくね?」
インカレ予選となる各地のリーグ戦順位ならびに昨年の結果が反映され、トーナメントが決まる。しかし、実力とはまた違うものであり、それを証明する戦いが今、繰り広げられている。2試合連続、関東勢との接戦を制した中京大学は第6シードの筑波大学を61-56で破り、ベスト8進出を決めた。
今夏に新設された新人インカレ(全日本大学バスケットボール新人戦)でも対戦し、73-68と同じく5点差で金星を挙げ、少なからず自信はあった。関東の強豪校を次々と破って全国3位となった成功体験により、その後の練習は見違えるほど意識を高く持って取り組むこともできた。下級生が主力の中京大学にとって、新人インカレと戦力はほぼ変わらない。唯一、1年生の高橋快成が特別指定選手として三遠ネオフェニックスに行った穴は確かに大きい。しかし、松藤貴秋監督は「快成がいなくなったから負けたってのはお前らダサくね?」と選手たちを焚きつける。もうひとつ、「筑波大学に負けるのはしょうがないけど、自分たちのバスケットができなかったら、それはダセーぞ。やるべきことをちゃんとやって帰ろうぜ」と力を出し切れずになんとか勝利を拾った江戸川大学戦を引き合いに出してモチベーションを高めていった。
序盤は #36 カミソコ オマールのインサイドを起点に中京大学が先手を取り、前半を35-22と13点リードして折り返す。対する筑波大学にとってはこれがインカレ初戦であり、「意識はしないようにしたんですけど、やっぱり全体的に硬かった部分はあったと思います」と振り返るとおり、筑波大学 #31 小川敦也らしくないミスが続いた。インカレに向けて「ディフェンス練習しかしていない」という指揮官の言葉どおりのプレーで、チグハグな筑波大学に襲いかかる。ミスを誘い、こぼれたボールを中京大学の選手たちはコートに飛び込みチャンスを作っていった。
筑波大学も新人インカレに敗れた下級生が奮起し、#13 岩下准平が気迫でボールを追いかけると流れが傾く。残り4分55秒、#1 福田健人が速攻を決め、土壇場で逆転に成功。筑波大学はスタメンに戻して勝負をかけた。その流れを切るバスケットカウントを決めたのが、渡邊翔豪である。
大事な場面でしっかり決め切る嗅覚の持ち主
初戦の江戸川大学戦は99%負けゲームだった。攻め急いだ相手に助けられるようにラストチャンスをつかみ、ゴールへ向かって走り込んだ渡邊がブザービーターを決めて86-85とし、勝利の立役者となった。
「もうホントに、たまたま自分にボールが回ってきてくれて、決め切るところをしっかりと決め切れたので良かったです」
筑波大学戦も先に挙げたバスケットカウント以外にも、苦しい場面で次々とビッグショットを決めてみせた。「本当にあそこで決め切らなければ、流れが相手に行ってしまう大事な場面でした。中野(友都)や高村(駿佑)もすごいマークされて、インサイドの(カミソコ)オマールも濱田(真魂)にも厳しいマークがついており、自分がノーマークになったので思い切って打ちました」という渡邊の活躍が、筑波大学戦も勝利を呼び込んだ。