7シーズン目のBリーグが幕を開けた。過去2シーズンは2クラブずつがB1に昇格してクラブ数が減っていったB2は、その分B1昇格のチャンスも数字の上では広がった。今シーズンは久しぶりにB3からの昇格組が加わり、昨シーズンと同じ14クラブで争われるが、特に長崎ヴェルカが昨シーズンB3でたった3敗しかせずに昇格してきたことを考えると、今シーズンのB2の群雄割拠感はさらに強くなる。
昨シーズンはプレーオフに進出できなかったクラブも決して侮ってはならず、開幕節は7カード中6カードが1勝1敗と、実力差が縮まった印象を受ける。その中で、昨シーズンB1昇格まであと一歩に迫った香川ファイブアローズを相手に、9月30日の開幕戦は69-72で落としたものの翌日に98-72と26点もの大差で取り返した愛媛オレンジバイキングスは、今シーズンのB2のダークホースになり得るクラブだ。
思い返せば、昨シーズンもプレーオフに駒を進めるチャンスはあった。開幕からの10試合で1勝9敗と大きく出遅れながらも、2月と3月の15試合を12勝3敗と大きく勝ち越し、目まぐるしく順位が入れ替わっていた西地区の上位4クラブに急接近。最終的には西地区5位、リーグ全体9位でプレーオフに届かなかったが、4月の9試合連続中止がなければ、クラブ初のプレーオフ進出は既に叶っていたかもしれないのだ。
今シーズンは河野誠司、飛田浩明、古野拓巳という経験値のある3人が加わり、外国籍選手の3人が全員残留したのはB2では唯一。昨シーズンからの積み上げという点では大いに期待できる布陣だ。開幕節でライアン・クリーナーは2試合とも25得点9リバウンドをマークし、アンドリュー・フィッツジェラルドも2試合続けてダブルダブルの活躍を見せたが、在籍3シーズン目となるユージーン・フェルプスの存在感は特に大きい。198センチと決して上背はないものの、驚異的なフィジカルの強さを誇り、昨シーズンは32試合連続ダブルダブルのリーグ記録を打ち立てた。間違いなく愛媛の大黒柱と言っていい選手だ。
ホームで迎えた香川との開幕戦は残り1分34秒でファウルアウトし、7得点12リバウンド。ダブルダブルに届かなかった3点がそのまま香川との点差になったことを考えてもとりわけ悔やまれる出来だったが、「彼に関しては、このチームに引っ張ってきたときにその人間性とプレーの特徴は私もしっかり理解して、年に何回かはこういう試合もあるという認識でいました。すごくスマートな選手で、感情を表に出すこともないし、練習もハードにやってくれるので、誰も彼に対するフラストレーションはない。数字的に物足りなさはありましたが、気にはしていません」という庄司和広ヘッドコーチの言葉からは、チームの要として厚い信頼を寄せられていることがよくわかる。
そして一夜明けた第2戦は、第1クォーターだけで7得点とエンジン全開。その後もマイボールになればすかさず走りだし、内外から積極的に得点を狙い、リバウンドに跳び続け、最終的には30得点17リバウンドを叩き出した。昨シーズンベスト4の香川に26点差をつけた大勝劇は、フェルプスを抜きに語ることはできない。そしてその裏には、昨シーズンの教訓もあったということだ。
「昨シーズンは始めの頃に負けが込んで、チーム全体が下を向いてしまっていた。でも、今シーズンは敗戦から始まってもヘッドダウンせず、自分自身も昨日のことは昨日で終わりというマインドセットでしっかり切り替えて戦うことができた。もっと良くしていかないといけないことはありますが、今日勝ちきれたことは自信になるし、今シーズンのこのチームは今までとは違うということも感じています」