「今更なんだけどさ……」
隣の席で作業をしていた、ホテルの部屋をシェアしているカメラマンが話しかけてきた。
「山本麻衣のお父さんってバレーボール選手だったんだね……俺、彼を撮影したことあるわ。そうか、そういう年齢なんだなぁ」
彼とは別のカメラマンは数年前、SNSで「これは誰の子でしょう?」と、どこかの銅像の写真をあげてきた。
知るはずもなく、わからないと返信したら、「この人の親の子です」と戻ってきた。
それはそうだ。
誰しもが親になるわけではないが、生を受けた時点で人は誰かの子ではある。
そんなことを思い出したのは、隣のカメラマンが感慨深く語り始めたからではない。
目の前の試合で気になったことを調べてみたら、ある親子関係が見えたからだ。
女子ワールドカップの4日目は予選グループBだけのスケジュールで、コートではマリ対フランスが始まっていた。
マリは日本に<56-89>で敗れ、オーストラリアにも<58-118>で敗れている。
一方のフランスは初日に開催国・オーストラリアを破ったものの、2日目はカナダに敗れている。
フランスが決勝トーナメントに進もうと思えば、調子の上がらないマリに負けるわけにはいかない。
むしろ、この試合を調子を上げるきっかけにしたいところだろう。
しかしフランスは序盤から苦戦を強いられてしまう。
エースのマリーナ・ジョハネスと、大黒柱のサンドリン・グルーダを欠いていることが、それほどまでに影響を及ぼしているのか。
あるいは、昨年のユーロバスケット以降、ヘッドコーチが替わったことで、チームとしての戦い方がまだしっくり来ていないのだろうか。
オーストラリア戦は今大会のエース、ガビ・ウィリアムズの調子が良かっただけで、チームとしては未完成なのかもしれない。
ならば新たに就任したヘッドコーチとはどんな人なのか。
そんなことを知りたくなるのも、ワールドカップの楽しさである。