全日本大学バスケットボール新人戦(プレ大会)女子3位決定戦。前半で約20点差をつけられた大阪人間科学大学に対し、次々と得点を重ねて45点を挙げたのは、東海大学九州 #1 森口朱音(3年)だ。しかし、試合は76-77で1点及ばず、4位に終わった。昨年のインカレ(全日本大学バスケットボール選手権大会 )で4年ぶりに全国の舞台に返り咲いた東海大学九州であり、今大会のベスト4進出は素晴らしい結果をおさめた。
しかし、森口の心境は「1点差で負けたのはすごく悔しい」というのも当然である。45点を挙げたこの試合だけではなく、初戦の松蔭大学戦は33点、準決勝の東京医療保健大学戦ではチーム総得点(49点)のうち21点をマークし、5試合で139点(平均27.8点)を叩き出し、大会得点王になった。圧巻は、大阪人間科学大学戦で追い上げる後半だけで35点を決めている。前半のシュート成功本数は3本だったが、後半はさらに13本上乗せしており、その成功率は68.4%を誇る。
ハーフタイム中、東海大学九州の元炳善監督は「このまま終わったら経験が無駄になる。ここまで来た意味がない」と発破をかけた。森口の心にも着火し、「1点でも絶対に詰めようという気持ちが前に出たのかな」と気を吐き、45点を決めた。
2年生までの森口は、そこまで3ポイントシュートが得意ではなかった。しかし、「3ポイントシュートが入らない選手だと相手に思われているのが嫌だった」という反骨心から努力を重ね、その成果を全国の舞台で発揮する。3ポイントシュートを通算27本成功させ、その確率は42.9%と素晴らしい数字で3ポイントシュート王に輝き、大きな自信につながった。
インカレに次ぐ全国大会が誕生し、「試合経験ができることが大きいです」と森口はそのメリットを挙げる。その一方で、九州のスコアラーの存在が全国にバレてしまった。しかし、バスケは5人で行うスポーツであり、一人だけが群を抜いて活躍しても勝てるわけではない。実際、大阪人間科学大学戦は悔しい思いをしている。
「自分一人でやり過ぎてしまったところがあり、そこは修正点です。今大会は自分が得点を取っていましたが、次からは自分がまわりを活かして、そこから得点が取れるようにしていきたいです」
森口自身が3ポイントシュートを覚醒させ、得点力では全国で通用することを示す大会となった。今後の九州内の戦いも、そこを勝ち上がってインカレに出てきても徹底マークされることは明確である。何より、今大会を見に来た多くのファンの心をつかみ、その投票によってMIP賞に輝いた。
森口とともに他の選手たちにとっても大きな経験となり、成長の場となったはずだ。185cmの大舘真央(3年)が軸となり、衛星のように#17 伊藤陽和里や#31 合屋碧ら1年生が積極的にゴールを狙っていけば、勢いに乗れるような火種は見えている。
文・写真 泉誠一