2年間という月日は、その状況によって長く感じることもあれば、あっという間に過ぎてしまうこともあるが、アスリートにとっての2年間はおそらく長いものだろう。まして、現役を退いた者にとっては、あらゆる面でそれ以前との違いを感じることが多いはずだ。しかし、日本バスケット界にことのほか大きな足跡を残したこの男は、引退から2年が経っても何も変わっていなかった。
6月18日、北海道札幌市にある北海きたえーるは、2年越しとなったスーパースターの最後の雄姿を見届けようと5408人ものブースターでごった返した。試合開始3時間前の開場直後から記念グッズの売り場には長蛇の列ができ、会計に30分を要するほどだった。これだけでもそのスーパースター、折茂武彦がいかに北海道に愛されているかがわかるというものだ。
27シーズンにわたってプレーしたとあって、出場選手も豪華だ。現役選手で構成され、水野宏太ヘッドコーチが率いるTEAM 9はレラカムイ北海道時代から長くチームメートだった野口大介、自国開催の世界選手権でともに戦った五十嵐圭や竹内公輔・譲次兄弟、川村卓也らが顔を揃え、トム・ホーバスがHCを務めるTEAM LEGENDには同期の佐藤信長や1学年下の古田悟、2学年下の節政貴弘、トヨタ自動車の黄金期を過ごした渡邉拓馬や半田圭史、折茂に憧れて現役時代は同じ9番を背負った梶山信吾といった往年の名選手が集った。また、折茂の大学の後輩でもある山田大治と種市幸祐にとっても、これがブースターの前でプレーを披露する最後の機会。いずれも北海道で折茂と共闘したとあって、この2人を見届けたいブースターも少なからずいたに違いない。
折茂はこの日に向けて、自身がレバンガ北海道にヘッドコーチとして招聘した佐古賢一とともにトレーニングを積んできたという。TEAM LEGENDでプレーする折茂は、試合前に「あとはTEAM 9の選手たちが忖度してくれるかどうか」と語っていたが、トヨタ自動車時代から15シーズンにわたってコンビを組み、折茂の取扱説明書を持っている桜井良太にしてみれば、これは前フリに過ぎなかったのだろう。開始8秒で「狙ってました」という最初の得点を決めると、その後も折茂のディフェンスに対してあえて正面から突っ込んでオフェンスファウルを取られるなど、容赦なく折茂にコンタクトを仕掛けた。
折茂に対するハードコンタクトは朝山正悟と柏木真介も桜井に続き、折茂も「あの3人はヤバすぎる(笑)」と名指しで糾弾。しかし、そんな中でも前半は12得点を挙げてみせた。日大とトヨタ自動車で1歳下の関口聡史らをスクリーナーに使って巧みにディフェンスを振り切るスタイルは、現役時代そのまま。ワイドオープンよりもコンテストされたほうがシュートの成功率が上がる点も、いかにも折茂らしい。