「Good Afternoon、こんにちは」
いつもどおり英語のあとに日本語で挨拶するルカ・パヴィチェヴィッチヘッドコーチが、アルバルク東京での最後の記者会見がはじまった。
「アルバルクという素晴らしいチームでヘッドコーチをする機会を与えてくれたことに感謝します。また、日本という素晴らしい国でコーチできたことは、私にとっても家族にとっても宝物であり、素晴らしい思い出になりました。(中略)最後に、アルバルクファンの皆さんが全ての試合に対し、情熱を持って一緒に戦ってくれました。来シーズンはそれを感じられないと思うと寂しい気持ちです。皆さんのサポートが、私のモチベーションと情熱につながっていました。ファンの皆さんがアルバルクを、そして私を応援してくださったこの5年間はすてきな思い出であり、一生の宝物です」
常に戦う姿勢を見せ、そして献身的な努力をするプロ意識を持った選手でなければならないアルバルクのレガシー
2017-18シーズンよりA東京のヘッドコーチに就任し、いきなりBリーグチャンピオンへと導いた。翌シーズンにはBリーグ初となる2連覇を達成。ルカコーチも2年連続最優秀ヘッドコーチ賞に選ばれた。3シーズン目が開幕する直前に行われたFIBA ASIA CHAMPIONS CUPでも、日本勢としてはじめてアジアの頂点に立った。その後のBリーグはコロナ禍でシーズンを全うできなかったが、32勝9敗の最高勝率を記録し、東地区チャンピオンとなる。「最初の3年間は素晴らしい結果を残すことができました」というルカヘッドコーチは、A東京の歴史に輝かしい功績を残していった。
「しかし、4シーズン目はコロナで大打撃を受け、それが大きな壁となり、苦しい状況が続いたシーズンとなりました」と言うように戦力が揃わず、比例するように結果も伴わない状況に陥る。昨シーズンは32勝24敗で東地区6位に終わり、チャンピオンシップ進出も逃している。今シーズンは同3位でチャンピオンシップに返り咲いたが、クォーターファイナルで敗れ、目標を叶えることはできなかった。
「さまざまな問題があった最後の2シーズンでしたが、いつこの暗闇から抜け出せるかを日々悩んでいました。最終的に結果が残せなかったことに対し、コーチとして責任を負わねばならないと感じ、今シーズン限りで残念ながら退任することを決めました」
ルカコーチはA東京を、「レアル・マドリードやゴールデンステート・ウォリアーズ同様のビッグクラブ」と考え、真摯に向き合ってきた5年間でもあった。「結果が全てである勝負の世界。レアル・マドリードなどと同じように、アルバルクも勝たなければならないチームであり、毎試合勝利が求められ、毎シーズン優勝するための重責があるチーム」と自らにプレッシャーをかけ、妥協することなく戦ってきた。
今後の去就についての質問に対し、「Bリーグの長いシーズンの中で、常に勝たなければならないプレッシャーのかかった5年間であり、あっという間に過ぎた5年間でした。そのためにメンタル的にも身体的にも疲労が溜まっています。コロナ禍のために家族とも過ごせていなかったので、まずはセルビアへ帰ってバスケから離れて少し休みたいです。新たなステージはまだ白紙であり、今は考えられる余裕もありません」と全てを出し尽くしたからこそ、休養が必要だった。