粘り強いディフェンスで追い上げ、逆転する勝ちパターン
もし、バスケ版流行語大賞があれば、史上初の銀メダルを獲得した女子日本代表のトム・ホーバスヘッドコーチが残した『スーパースターはいないがスーパーチーム』に与えたい。インカレ(第73回全日本大学バスケットボール選手権大会)男子決勝にはじめて進んだ白鷗大学も、高校時代から名を馳せてきたような選手はいない。連覇を目指すスター軍団の東海大学に対し、粘り強いディフェンスとチーム力で上回り、63-58の逆転勝利で初優勝に輝いた。
前日の準決勝では、筑波大学の前に第2クォーターは6点しか取れず、19-27と劣勢に立たされる。網野友雄監督は「選手たちの気負いをベンチから見ていてもすごく感じていた。力みすぎていた」という緊張をほぐすように、「自分たちの持ち味であるディフェンスをしっかり意識しよう」と原点に立ち返らせる。#56 小室昂大は、「後半がはじまる前にチームメイト同士で鼓舞し合ったことで緊張が少しほぐれ、強気な姿勢がだんだんと出せたと思います」と言い、後半は見違えるようなプレーで追い上げる。残り4分、ファウルを受けた#25 角田太輝が3本のフリースローをしっかりと決め、52-51で逆転。2年生の#2 脇真大が16点を挙げる活躍でチームを引っ張り、終わってみれば62-51と11点差をつけ、白鷗大学として初となる決勝へと勝ち進んで行った。
迎えた決勝戦も、デジャヴのようなビハインドを背負った状態で前半を終える。第2クォーターは東海大学のゾーンディフェンスを攻略できず、5分間ほど無得点だった。網野監督はオフェンスの修正点を伝えて決勝戦に臨んだが、「急に提案したことなのでうまくできず、点数が伸びなかったところがあった」という状況を招く。22-30、またしても追う展開で後半へと向かう。白鷗大学の武器はディフェンスであり、その強度の高さに自信と誇りを持っている。一桁点差は射程圏内であり、これまでも追いかける展開は何度も経験してきた。
準決勝の筑波大学戦では脇が、準々決勝の日本体育大学戦は#0 関屋心が19点を挙げていたが、東海大学には封じられてしまう。しかし、日替わりヒーローの活躍もまた、白鷗大学の強さだった。最後の舞台で輝きを増したのはキャプテンの#66 松下裕汰、大黒柱の#52 ブラ グロリダ、伏兵の#33 杉山裕介、何よりチーム力で上回る。第4クォーターに入るとディフェンスの激しさがさらに増し、松下が次々とタフショットをねじ込む。東海大学に流れが傾いてもおかしくはない場面が何度もあった。しかし、白鷗大学はプレッシャーをかけ続け、そして不格好ながらゴールを奪っていく。残り3分43秒、松下の得点で54-52と逆転に成功。続くディフェンスでボールを奪うと、杉山が3ポイントシュートを決めた。ガマンして、ディフェンスを信じて流れを呼び寄せた白鷗大学が、63-58で東海大学に勝利し、悲願の日本一を達成した。