B.LEAGUEは土日の連戦に加え、水曜日のゲームもある。今シーズンはさらに新型コロナウィルスの影響もあって、変則的な日程を余儀なくされた。例年に沿えば、「アイアンマン」はそうしたイレギュラーなシーズンにあってもスタメン、もしくはベンチスタートでも毎試合コンスタントにゲームに出て、チームに貢献した選手に贈られるものだ。
ところが、今年はそんなスタッツに目もくれることなく、誰かの「タケちゃんじゃない?」に即座の満場一致。けっして面倒くさかったわけではない。選考に疲れていたわけでもない。本気で誰もが今年は彼だと思っていた。
なぜなら彼は2015年に一度引退しているからだ。引退し、次のステージとしてコーチ業を始めたにも関わらず、一年後には引退を撤回、38歳になろうかという年に現役復帰を果たしたのだ。そこから5シーズン、戦線離脱するような大きなケガなく、今シーズン終了後、無事に2度目の引退を発表した。
タケちゃんこと、竹田謙。やはりあなたはスピリッツが選ぶ「アイアンマン」にふさわしい。原稿に「タケちゃん」なんて書いてもしっくりくる、それでいて誰からも咎められないような選手はアナタしかいない。読者諸氏も「竹田が~」と書かれるより、「タケちゃんが~」、もしくは「タケさんが~」のほうが親しみやすいのではないだろうか。
親しみやすさのある鉄の男。誰からも愛されるアイアンマン。
数字だけを見たら、平均出場時間は特別指定選手の河村勇輝(東海大学2年)よりも少なかった。得点も、リバウンドも、アシストだって下回っている。しかしそこに在るだけでチームの力になる、という選手が、不思議なことにあるものだ。横浜のタケちゃんはまさにそんな選手だった。
いや、プレーでだって見せてくれただろう。そう反論するタケちゃんファンも多いはずだ。間違いない。いつだってタケちゃんは飄々と、ヘッドコーチに求められた仕事をこなし、それが終われば、さっさとベンチに下がる。職人だったよな。かっこよかったよな。ベテランの鏡だったよな。
でもそれって実はとても大変なことだったと思う。出るかどうかもわからない、呼ばれるタイミングだってわからないなかで、常にコンディションを整えておかなければならない。疲れだって、今の河村クンみたいに翌日にはスッと抜けてくれるはずもない。それでもコートに立つ準備を怠らならなかった。体力もさることながら、精神面でも「アイアンマン」でなければ、できない芸当だったと思う。
来シーズン、ベンチにタケちゃんの姿が見られないと思うと少し寂しい。でもゼネラルマネージャーとして、多くの苦労を重ねてきたアナタだからこその手腕を見せてもらいたい。期待している。
もちろん、2度あることは3度あってもいい。
文 三上太
写真 B.LEAGUE