少しでも集中力を欠けば、チャンピオンシップではその時点でゲームオーバー
新型コロナウイルスの陽性者が出たことで中止となった試合もあり、足並みが揃わない中ではあったが、なんとかB1もレギュラーシーズンが終わった。最終戦に勝てば、順位を上げるチャンスがあったのはサンロッカーズ渋谷だ。対するは、新型コロナウイルスの影響によってこの1か月間は週3日の過密スケジュールを駆け抜ける千葉ジェッツ。
チャンピオンシップが今週末に迫る中、どちらも余力を残すことなく主力を起用し、いつも通りの戦いを見せる。50-53、SR渋谷がリードをして前半を終えた。しかし第3クォーター、一気にゲームが動く。千葉はその10分間で31点を挙げた。大野篤史ヘッドコーチが「前半はディフェンスがソフトだった」と指摘する点を修正し、SR渋谷を16点に抑え、81-69と抜け出す。結果は104−83で千葉が勝利し、9連勝の勢いそのままに東地区2位を死守、ホームで迎えるチャンピオンシップへ向かう。
第3クォーターに防戦一方となったSR渋谷は、2度のタイムアウトを取ったが流れを断ち切れないまま点差が離れていく。伊佐勉ヘッドコーチは、「メンタル的にレギュラーシーズンの1ゲームのように後半は入ってしまった」と敗因を挙げた。結果次第で今後の対戦相手が決まるSR渋谷ではあったが、勝っても負けてもチャンピオンシップへとつながる戦いを求めていた。「第3クォーターの出だしのような集中力を欠いたプレーをすれば、チャンピオンシップではその時点でゲームオーバーになってしまう」と伊佐ヘッドコーチは試合後のロッカールームで選手たちに伝え、この試合をきっかけに目を覚まさねばならない。
SR渋谷は東地区5位、リーグ8位が確定し、チャンピオンシップ準々決勝は東地区1位の宇都宮ブレックスと対戦する。シーズン戦績は1勝3敗で負け越している宇都宮戦へ向け、「失点の少なさはリーグ1位のディフェンスを誇り、何よりも安定しているチーム。勝機を見出すのであれば、クロスゲームしかない」と伊佐ヘッドコーチは話し、アップセットを目指す。
選手層の厚さ≠タレントの多さ
3月24日の新潟アルビレックスBB戦後、千葉は新型コロナウイルス陽性判定を受けた。この猛威に対し、いくら万全な対策をとっても防ぎようがないのが現状であり致し方ない。2週間の隔離生活となり、その間はもちろんチーム練習ができず、同時に少しずつ試合感覚が失われていく。試合が延期となった影響により、週3日の過密スケジュールが待っていた。
再開後はSR渋谷、川崎ブレイブサンダースに敗れ、3連敗を喫する。しかし、下を向いている暇がないほどの間隔でやってくる試合を通じて修正し、成長できたことで連勝を重ねていった。技術や戦術ではなく、苦しい期間をともに乗り越えたことで、「チームとしての成長が見られた」と大野ヘッドコーチは言い、それが9連勝につながった。チームメイトを信頼し、ボールを共有しながらしっかりと状況を見つめて戦えるようになった今、ヘッドコーチが求める理想のスタイルへと変貌を遂げた。
千葉の試合を見ていて、『選手層の厚さ=タレントの多さ』ではないことを感じる。もちろん他のチームと比較し、千葉には素晴らしい選手が多いのは間違いない。だが、それだけで好成績を収められるほど、Bリーグは甘くない。選手それぞれが役割を果たし、短いプレータイムの中でも結果を出し、仕事を全うできる選手が多いことが層の厚さにつながる。そこにタレント力はあまり関係ない。「チャンピオンシップに向かうにあたり、ローテーションに入れるかどうかの競争になる。一人ひとりがアピールしたいという気持ちを持ってプレーしてくれたおかげ」という大野ヘッドコーチの言葉どおり、チーム内で切磋琢磨させながらその厚みを増して行った。