本川紗奈生が移籍をした。
シャンソン化粧品シャンソンⅤマジックからデンソーアイリスへ。
今オフ最も注目された移籍といっていいだろう。
移籍をするにあたって、本川はさまざまなことを考えたと言う。
「理由はいくつかあります。自分自身がレベルアップしたいとも思ったし、勝ちたい、優勝したいという欲が強かったのも事実です。もちろん現役を終えるまでシャンソンでチームメイトと共に戦って優勝したいとも思っていました。また年齢的なことを考えたときに、あと何年プレーできるんだろう、今から移籍して大丈夫なのかな、そんなことも考えました。移籍したからといって絶対に優勝できるわけじゃないこともわかっています。それでも目標を達成するためには、まずは行動に移さないといけないんじゃないか。移籍して、違うチームに行ったときに自分がどうなるのか。9年間シャンソンにいて、自分としては居心地もよかったけど、レベルアップをするためには移籍したほうがいいんじゃないかと思って、決めました」
近年のシャンソン化粧品の“顔”は、間違いなく本川だった。いわゆるフランチャイズプレーヤー。チームとしても手放したくなかったはずだ。
しかも複数のチームからオファーを受けた本川が選んだのはデンソーである。髙田真希という日本を代表するオールラウンダーがいて、彼女がチームの“顔”として君臨している。捉えようによっては自らの格を落とす移籍とも受け取れる。
「それについてもちょっとは考えましたよ。デンソーと言えばリツさん(髙田)だし、私の影は絶対に薄くなるって。でもそういうプライドは、私、意外とあっさりしているんですよね。たしかに周りからも言われたし、親にも言われました。『シャンソン=本川だよ』って。でも私にしてみたら『だから何?』なんですよ。あと2〜3年、みんなの言う『シャンソン=本川』としてプレーしても結果は残せたと思います。その自信はあります。そう言われることは本当に名誉なことだけど、でも特別じゃない。デンソーでも『髙田と本川だよね』って言われたらよくない? って」
周囲からの評価さえ吹き飛ばすさらなる活躍を、今回の移籍で成し遂げたい。それくらいの強い意思を持って、移籍に踏み切ったというわけだ。
思い出すシーンがある。
2007年の「U-15女子トップエンデバー(現・U15ナショナル育成キャンプ)」。
そこに釧路町立遠矢中学3年の本川の姿があった。
第1回キャンプは全国から30名の女子中学生が集められ、その平均身長は172.5センチ。本川も選出された第2回キャンプは15名に絞られ、平均身長は173センチに微増。当時172センチだった本川は、いわば平均的な身長である。しかし体格に恵まれていたこともあって、コーチングスタッフは本川にインサイドでのプレーを求めた。本川は頑として受け付けなかった。