part3「“引退”は次のステージに向かう切符」より続く
僕は“特別な選手”じゃない
僕は自分のことを『特別な選手』ではないと思っています。特に秀でているものがあるわけじゃないし、身体が強いわけでもない。小学校でも中学校でも僕より上手い選手はたくさんいました。じゃあなんでそんな自分がこんなに長くプレーを続けてこられたのかというと、恐らく自分が“特別でないことを知っていたから”だと思うんですね。僕より上手い子たちはそのうち違う楽しみを見つけたり、何かしらのきっかけでバスケットを離れていってしまったけど、“特別ではない自分”を知っている僕は誰に認めてほしいとも思わず、ただ好きなバスケットをコツコツやってきた。だけど、ちょっとしたことから大きなチャンスをもらえて、そのチャンスを生かすためにまたコツコツ頑張って、その繰り返しでここまで来たような気がします。自分のキャリアはコツコツの繰り返しでできているんですよ。
自分は後輩たちにいい背中を見せられただろうか?
13年のアルバルクの生活の中で、何が一番心に残っているかと考えたとき、もちろん5年目の優勝も大きいんですけど、それよりも強烈に思い出すのは先輩たちの背中なんです。入団したときの先輩たちは本当にすごい人ばかりで、その中に自分が混じってやれることが楽しくてしかたなかった。コートの中でも外でも、あの背中からたくさんのことを学びました。今、自分が引退を決めて思うのは、後輩たちにいい背中を見せられてきたかなあということ。自分が先輩たちから受け取ったものを引き渡せたかなあということ。ここから彼らがまたアルバルクの歴史を作っていくわけだけど、それは昨日、今日の成功のためだけじゃなく、10年後、20年後、このユニフォームを着る選手たちが「ああ、あのときのアルバルクがあったから今の俺たちがいるんだなあ」と思えるようなチームを作っていってほしい。そんなアルバルクであってほしいと思います。
じいちゃんになったら記念写真を撮りたい
自分にとって同期というのはやっぱり特別な存在なんですね。「おまえがいなくなるのは寂しいよ」と言われると、心の中で「いや、絶対俺の方が寂しいから」と思う(笑)。これまで引退していった同期もいますが、きっと今の自分のような気持ちだったんだろうなって思いますね。ゴールデン世代と言われた僕たちは、その呼び名に恥じぬよう切磋琢磨してきたし、いろんな時間をともにしてきたので多くを語らなくてもわかり合えるところがあります。最後に同じチームでやった(竹内)譲次や(菊地)祥平はもちろん、来シーズンもプレーを続ける同期たちには本当に頑張ってもらいたい。彼らがこれからもどんなキャリアを積んでいくのかすごく興味があるし、楽しみだし、心から応援したいです。昔、月バスで僕らの集合写真みたいなのを撮ってもらったことがあるんですよ。僕らがじいちゃんになったら、もう一度集合写真を撮ってもらえへんかなあと思います。最後の1人が引退したとき、「お疲れさん」とみんなで迎えて、「おまえもとうとうこっちに来たな」とみんなで笑って記念写真撮りたいなあ。まあ、そんな日が来るまでコートを走る彼らに刺激をもらいながら、自分も別の現場で頑張るつもりです。