カンファレンスを1位通過した自信。対戦相手より1週間多く休めた余裕。しかしそれとは異なる“落ち着き”のようなものを、東芝ブレイブサンダース神奈川から感じることができた。
NBLプレイオフのイースタン・カンファレンス・ファイナルは、東芝神奈川がトヨタ自動車アルバルク東京を2連勝で破って、NBLファイナルへの進出を決めた。初戦は一度もリードを奪われることのない快勝。第2戦は最大17点差までリードを広げられながら、第3ピリオドに逆転をすると、そのまま一気に振り切った。苦しんだ末ではあるが、これも会心の勝利と言っていい。リードをしていても、されていても、東芝神奈川は東芝神奈川であると言わんばかりに彼らは落ち着き払い、最終的に勝利をつかみ取ったのである。
東芝神奈川の北卓也ヘッドコーチは選手たちによく「自分たちのペースでゲームができる時間帯を増やそう」と言っているそうだ。そこには当然、自分たちのペースではない時間帯もあることをけっして忘れてはいけない、という戒めも含まれている。
「ゲームの中には必ず流れの悪い時間帯があります。そんなときに焦ってしまって、チームのタイミングでも、自分のタイミングでもないシュートを打ってしまうのはよくない。流れが来るまで粘り強く、我慢するしかないんです。じゃあ実際に何をするかといえば、ディフェンスなんですよね」
これは終始リードを保ったまま終えた第1戦後の言葉だが、それを象徴する展開となったのが第2戦の前半である。後のないトヨタ東京が序盤から猛攻を仕掛けてきて、ディフェンスでもフィジカルの強さを前面に押し出してきた。一方の東芝神奈川はシュートがなかなか決まらず、頼みのニック・ファジーカスもファウルトラブルでベンチに下がらざるを得ない。このまま押し切られていくのか。しかし東芝神奈川のメンバーからはいっこうに焦りのようなものが感じられなかった。ポイントガードの篠山竜青が言う。
「前半を終えたところで(リードされている)点差を11点に抑えられたし、とにかく我慢してディフェンスをしていれば、今の自分たちの力なら追いつけるという気持ちはありました。レギュラーシーズンを54試合戦ってきて、オールジャパンでも優勝したことで、落ち着いて、ドンと構えられる自信のようなものがついてきたんだと思います」
後半、劣勢を立て直すべく敷いた東芝神奈川のゾーンディフェンスが、トヨタ東京の攻撃を静める要因となったのは間違いない。戦術的にはそれが勝因だろう。しかし今の東芝神奈川には自分たちの流れが来るまで我慢し続ける“忍耐力”が備わっている。むろんファジーカスや辻直人、セドリック・ボーズマンという3人の得点源がいる安心感もあるだろうが、彼らがその力を引き出せるときまで、チームとしてじっくりと耐え忍んで待てる。
「それこそがレギュラーシーズンを戦ってきた収穫です」
北ヘッドコーチが認めるチームの成長点であり、コート上から感じられた彼らの“落ち着き”の正体でもあったのだ。
レギュラーシーズンとプレイオフは別モノである――トヨタ東京のルーキー(アーリーエントリー)、田中大貴はそう言ったが、NBLの前身であるJBLで活躍し、優勝経験のある北ヘッドコーチもまたそれを十分に理解している。しかしそのうえでプレイオフがレギュラーシーズンの先にあることをけっして見逃してはならない。東芝神奈川がトヨタ東京を上回ったのは、1位通過の自信や体力的な余裕だけでなく、レギュラーシーズンを通して得た収穫の大きさによるものだったのである。
NBLプレーオフ ファイナル@代々木第二体育館
- GAME1:5月21日(水)19:00 東芝神奈川 vs 和歌山 or アイシン三河
- GAME2:5月22日(木)19:00 東芝神奈川 vs 和歌山 or アイシン三河
- GAME3:5月24日(土)15:00 東芝神奈川 vs 和歌山 or アイシン三河
- GAME4:5月25日(日)15:00 東芝神奈川 vs 和歌山 or アイシン三河
- GAME5:5月26日(月)19:00 東芝神奈川 vs 和歌山 or アイシン三河
5戦3先勝方式のため、GAME4以降は開催されない場合あり
GAME3までのチケットは好評発売中!
三上 太