河村勇輝の三遠ネオフェニックス入団は今シーズンもっとも注目されたニュースと言っていいだろう。福岡第一高校をウインターカップ2連覇に牽引した司令塔であり、卓越したスピードとパスセンスで『富樫二世』の呼び声も高い逸材。しかも河村のすごさはコートの中だけではない。1月24日に行われた入団記者会見で見せた河村の堂々たるトーク力には「これが本当に高校生なのか?」と舌を巻いた。中でも「プロチームに入ってやっていく自信はありますか?」の質問に「自信がなければ挑戦しません」と、きっぱり答えたあと、「でも、それは自分がBリーグで通用するという自信ではなく、どんな壁にぶつかっても挑戦し続けるという自信です」と続けた言葉は多くのバスケファンの胸にまっすぐ届いたのではなかろうか。
デビュー戦となったのは1月25日の千葉ジェッツ戦。三遠のホームである豊橋市総合体育館にはそれまで(平均2568人)を上回る3036人の観客が集まり、1Q残り3分41秒に河村がコートに入ると(18歳8ヶ月23日でB1最年少出場記録を達成)場内は大歓声に包まれた。さらに残り45秒にフリースローを確実に2本沈めて最年少得点記録もあっさり更新。初のプロの舞台は「緊張した」というものの22分のプレータイムを得て8得点、3アシストの結果を残した。が、河村の活躍はそれにとどまらない。翌日の2戦目は21得点と大きく数字を伸ばし、続く1月29日の新潟アルビレックスBB戦ではチームハイの24得点をマーク。最終的に記録した11試合(内7試合スタメン)出場、平均12.6得点、アシスト3.1、スティール1.5のスタッツは『高校生の特別指定選手』の枠をはるかに超える活躍だったと言えるだろう。
その姿を見ながら思い出したのは3年前のウインターカップ。スタメンに起用した1年生の河村について井手口孝監督はこう語った。「あの子は速いだけじゃなくて、丁寧で優しいパスを出せる。いざとなったら自分で攻められる。なにより自分の頭で考え、自分の言葉でしゃべることができる。そうしたことがガードに欠かせない資質だと私は思っています」。
その言葉を反芻しながら、河村の“これから”に期待は大きく膨らんでいく。
文 松原貴実
写真 B.LEAGUE