「Basketball Spirits」では例年、リーグが選ぶベスト5(これを「本家」と呼ばせていただいている)とは異なる人選でベスト5を選ぼうと考えている。とりわけWリーグは、つい気を緩めると本家とまったく同じ5人を選びかねないので、その5人を除外してから選考がスタートする。しかし本家の5人を除くと、どのポジションも非常に拮抗した選考となり、スムーズな結果を得られない。最後は誰かの「えいやっ!」で決まることもあるとか、ないとか。さて2019-2020シーズンのSpiritsなベスト5とは ─── 。
まずはポイントガード部門から。タレント豊富なトヨタ自動車アンテロープスを持ち前のクイックネスと、強気なアタックで引っ張った安間志織がSpiritsなポイントガードに選出された。持ち前の得点力で日本代表の正ポイントガードの座を射止めた本橋菜子(東京羽田ヴィッキーズ)、ルーキーながら存在感を示した齋藤麻未(トヨタ紡織サンシャインラビッツ)も捨てがたかったが、安間の所属するチームが2位でフィニッシュしたことと、安間自身も平均得点、平均アシスト数をしっかりと上げたことでほかの2人を上回った。
シューティングガードは熾烈を極めた。岡本彩也花(JX-ENEOSサンフラワーズ)と本川紗奈生(シャンソン化粧品シャンソンVマジック)、篠崎澪(富士通レッドウェーブ)という実力者がノミネートされたが、まずは岡本のMVPが早々に決まったことで、ベスト5からは下りていただいた。本川か、篠崎か。スタッツを見ると本川がやや有利なのだが、数字だけでは選ばないのがSpiritsの流儀。本川も苦しい台所事情の中でエースとして奮闘していたが、持ち味であるフィジカルの強さを今シーズンもフルで発揮し、速攻では常に先頭を走って町田瑠唯からのキラーパスを受け続け、チームの最終順位を前年の7位から3位にまで引き上げた篠崎が僅差で上回った。
日本の未来を担う若手が競い合ったスモールフォワード部門。日本代表ではスタメンシューティングガードとして、その座を固めつつある赤穂ひまわり(デンソーアイリス)と、11月にマレーシアでおこなわれたプレOQTで日本代表のスモールフォワードのひとりとして名乗りを上げた宮下希保(アイシン・エィ・ダブリュ ウィングス)を、本家Wリーグ新人王の東藤なな子(トヨタ紡織サンシャインラビッツ)が抑え込んだ。赤穂と宮下も、むろん所属チームには欠かせない選手で、特に宮下はチームのエースなのだが、今シーズンに関しては東藤のインパクトがあまりにも強すぎた。高卒ルーキーで16試合全試合にスタメン出場し、チームトップの平均14得点はリーグ8位。スティールでもリーグ3位。繰り返すが、高卒ルーキーである。18歳でそこまでやれる子、いる??? 来シーズン以降と、今後の日本代表入りへの期待も込めて、今シーズンのSpiritsなスモールフォワードは東藤とさせていただいた。
パワーフォワード部門は、文句なしで馬瓜エブリン(トヨタ自動車アンテロープス)に決まった。移籍3年目のシーズンで、平均得点こそ昨シーズンを下回ったが、リバウンド数、3ポイントシュートの確率はアップ。しかも、ともにチームトップで、リーグでも10位以内に入っている。選考会議の終盤、突如、桜花学園高校の1学年後輩である加藤優希(トヨタ紡織サンシャインラビッツ)が割り込んできたが、さらりとかわしてこの部門を勝ち取った。
最後はセンター。上記の加藤もオフィシャルでは「センター」なのだが、トヨタ紡織のバスケットが「ザ・センター」を置かないことから「パワーフォワード」として選考させていただいた。そうなってくるとセンター争いは以下の2人に絞られてくる。梅沢カディシャ樹奈(JX-ENEOSサンフラワーズ)と谷村里佳(シャンソン化粧品シャンソンVマジック)である。梅沢も大﨑佑圭の抜けた穴をよくカバーしたが、本川とともにシャンソン化粧品の二大柱としてチームを支えた谷村が上回った。スタッツを見ると昨シーズンに比べてやや落ちるが、センターながらスクリーンからの3ポイントシュート、いわゆる「ピック&ポップ」は谷村の大きな武器として各チームから警戒されつつある。そうした相手チームに与える影響も梅沢を上回る一つの要因となった。
文 三上太
写真 泉誠一、W LEAGUE