「Basketball Spirits」が誇る“大先生”石崎巧(琉球)、特別指定選手ながら存在感を示した中村浩陸(大阪)を抑え、ポイントガード部門でベスト5に選出されたのは齋藤拓実(滋賀)。A東京から期限付き移籍を果たした今シーズン、おこなわれた41試合すべてでスタメン出場し、リーグのアシストランキングでも2位に食い込んだ。才能を開花させたというより、その才能を発揮できるチームに巡り合えたというところか。A東京との契約が満了となり、さて来シーズンも滋賀でプレーするのか、注目したい。
琉球が誇るコンボガード岸本隆一、日本代表でもある安藤周人(名古屋D)の名前が挙がったシューター部門は“KJ”こと松井啓十郎を選出。今シーズンから移籍した京都の水が合ったのだろう、シューターとしての本領を発揮。リーグの3ポイント王にも輝いた。しかも喋れば含蓄のある言葉がつらつらと出てくるあたり、コロンビア大学卒の頭脳はさらに進化している。永吉佑也との対談では聞いている当方もさることながら、永吉も逐一頷かされていたところも選出理由のひとつ。
松井らと同じ京都のジュリアン・マブンガは非常に難しい選手。何か難しいかといえば、彼のポジションはどこ? というところ。オフィシャルではパワーフォワードなのだが、やっていることはそれ以外にもスモールフォワードだったり、センターだったり。セットによってはポイントガードにも見えたりしていた。つまりはオールラウンダーである。しかしビッグマンが後述の2人に決まったので、マブンガはスモールフォワード枠に。このフレキシブルさがBasketball Spiritsなのだが、それで割を食ったのは佐藤卓磨(滋賀)かもしれない。マブンガがビッグマン枠に入れば、スモールフォワードは佐藤だったはず。それでも壮絶な選出争いがおこなわれ、出場試合数こそ佐藤が上回ったが、得点、アシストなどのスタッツでマブンガに軍配が上がった。佐藤は狩野祐介との対談でも当方に貢献してくれたので、来シーズンは本家(Bリーグ)のベスト5以上の成績を期待しています。
ビッグマンはKBL(韓国プロバスケットボールリーグ)でも活躍していたディヴィッド・サイモン(京都)と、齋藤と同様にA東京から期限付き移籍をして、その才能を発揮したシェーファーアヴィ幸樹(滋賀)の名前も挙がった。しかしほぼ満場一致でジョシュ・ハレルソン(大阪)とジャック・クーリー(琉球)に決定。ハレルソンはリーグでもトップクラスのオールラウンダー。リーグのランキングは得点が7位、リバウンドが2位、ブロック3位で、スティールが10位。加えて208センチの上背で3ポイントシュートがリーグ8位。大阪躍進の立役者といっていいだろう。12月のSR渋谷戦で見せた2試合の合計65得点は圧巻だった。
一方のクーリーは今シーズンから琉球に加わった206センチのセンターだが、とにかく強い。ペイントエリア内で戦うことが自分の仕事と言わんばかりにリバウンドを取りまくって、見事リバウンド王に輝いている。得点もシーズンで3ポイントシュートを12本しか打っていないのに(しかも決めたのは1本だけ)9位にランクイン。まさに“The Center”と言える。ちなみに12本という数字は得点ランキング10位以内の選手では最も少ない(2番目に少ないのは島根のブライアン・クウェリの18本。うち成功は7本)。シーズン途中にヘッドコーチが交代するなど難しいシーズンだっただろうが、それでもチームを西地区1位に導いたのはクーリーの存在も大きかったはずだ。
文 三上太
写真 三上太、B.LEAGUE