part1「世界トップクラスのヘッドコーチがやってきた!」より続く
日本は危ないチームだと思っている
1999年にスペインでプロコーチとしてのキャリアをスタートさせ、21年目となるシーズンをトヨタ自動車アンテロープスのヘッドコーチとして過ごしているルーカス・モンデーロ。近年は中国で4年、ロシアで3年、プロチームのヘッドコーチを務めたが、日本のチームを指揮するのは初めて。しかしその関係はけっして浅くない。2009年、U19スペイン代表のヘッドコーチ時代に同世界選手権で初めて日本と対戦し、A代表に移ってからも2014年、2018年とワールドカップで対戦している。
インタビューの数日前までセルビア・ベオグラードでおこなわれていたオリンピック予選を戦い、東京オリンピックへの出場権を得たスペインのヘッドコーチは日本について、こう言及している。
「これは私個人の考えですが、日本と中国はメダルを獲れるチームだと思っています。日本は(ベルギーでおこなわれていた)オリンピック予選で、宮澤夕貴(JX-ENEOSサンフラワーズ)と髙田真希(デンソーアイリス)という2人のメインの選手がいないなかでも、すごくいい試合をしていたと思います。だから私は、日本は危ないチームだと思っているんです。ホームでプレーするときはかなりのプレッシャーがかかると思いますが、そのプレッシャーを乗り越えられればとてもいい試合ができるでしょう。アメリカ、オーストラリア、セルビア、フランス、カナダ、そしてスペイン……ほかにもメダルを獲れるチームは9か国ほどあると思っていますが、それを乗り越えられるかどうかがひとつのカギになると思います」
さらにモンデーロはもう一歩踏み込んでくる。
「世界のガードのなかでのトッププレーヤーはアメリカ、スペイン、それに続いて日本でしょう。日本にはグッドプレーヤーがいる。町田(瑠唯。富士通レッドウェーブ)、本橋(菜子。東京羽田ヴィッキーズ)、そして吉田(亜沙美。JX-ENEOS)。彼女たちも世界のガードのなかでトッププレーヤーたちです」
東京オリンピックで金メダル獲得を目指している日本にとって、スペインも倒さなければならない相手である。しかしその指揮官は日本についてしっかりと研究している。「日本は危ないチームだと思っている」という言葉にも偽りはないはずだ。そのうえで、スペインと対戦することになれば、私たちは全力で日本を倒しにいくよ、と言いたいのだろう。
成長のカギはオフボールマンの動き方
では彼自身が今、新たな土台を築き上げてようとしているトヨタ自動車の選手たちをどう見ているのか。それについてもモンデーロは隠すことなく持論を展開してくれた。
「攻めたい傾向……攻めることが好きな選手が多い気がします。だからこそ、私が今、アンテロープスで改善しようとしている点として、スペーシングの使い方があります。ボールを持っていないときの選手たちの動きですね。これはアジア全体 ── 中国は身長が高いので少し違うかもしれませんが、日本にせよ、韓国にせよ、全体的にオープンな状態、つまりスペースを広く使って、全員が開いている状態でプレーすることが多いですね。アジアのバスケットはチーム内にグッドシューターがいて、特に日本はいいシューターが多いのも特徴です。すごくいいことだと思うのですが、やはりバランスは必要です。オープンな状態でプレーすることが悪いと言っているわけでもありません。ただ、いつオープンになるのか。いつペイントエリア内でプレーするのか。スペーシングをどのように使っていくのか。そのためにはボールを持っていない選手の動きがとても大切になってくるんです」