part5「やっぱり私はポイントガードが好きなんだなって」より続く
挑戦し続けるマインドセット
吉田亜沙美が持つバスケットに対する純粋さは今も変わらない。むしろ一度、引退という道を選んで、より拍車がかかったようにも見える。
「11月にプレOQTに行ったときも、合宿のときからトム(・ホーバス女子日本代表ヘッドコーチ)が『3ポイントシュートを打って。いいから、打って!』って言ってきたので必死に3ポイントシュートを練習しました。それまではJX-ENEOSでもそんなに3ポイントシュートは打っていなかったんです。ピックからのジャンプシュートがほとんどだったんだけど、日本代表に行って『長い距離の2点は絶対に打たないで。ピックでフリースローラインくらいまで進んで、そこからのジャンプシュートならいいけど、それ以外は3ポイントシュートを打って』って言われたら、自分も合わさなければいけないわけですよ。だって今までと状況が違うんだから。ずっと日本代表にい続けていたんだったら、考え方も少し違っていたかもしれない。でも一度引退をした人間で、しかも直近のワールドカップやアジアカップにも出ていない人間だから、改めて日本代表候補入りしたときはやらなきゃいけないんですよ。だから必死に3ポイントシュートを練習したんです」
プレOQTでの吉田は圧倒的な存在感を示していた。やはり吉田は日本代表に欠かせない。誰もがそう思ったはずである。しかし本人はそう思っていない。「今はまだトライアウトの身だから」と言い続け、最後までそのスタンスを崩さなかった。3ポイントシュートも積極的に打っていた。そうしたマインドは今も持ち続けている。つまり今の吉田は挑戦者なのである。本人もそこに楽しさを見出している。
吉田の目は今、7月下旬に開幕する東京オリンピックに向けられている。もちろん選手として出場するのが目標である。日本はすでに出場権を得ているが、2月6日からベルギー・オステンドでおこなわれるOQT(オリンピック予選)には出なければならない。吉田はその候補選手のひとりとして、他のポイントガードとともにしのぎを削り合っている。そこには誰よりも大きな声を出し、誰よりも必死に走る吉田の姿があった。
世界に視野を広げていく
一度は現役を退きながら、それでもバスケットへの想いを断ち切れずに復帰をしてきた吉田が目指しているポイントガード像とはどんなものなのか。吉田はこれからどうなっていきたいのか。
「今は世界のバスケットも変わってきていて、1番から5番までが3ポイントシュートを打たなければいけなくなっています。今までの自分はパス ── リオデジャネイロオリンピックのときもパス中心で通用したところがあって、渡嘉敷(来夢)とのホットラインは今も絶対的なものだと思っています。ただそうしたことを踏まえて東京オリンピックに向けて戻ってきたとき、やはりどこのチームのヘッドコーチからも、もちろん日本代表のトムも含めて、誰にでも必要とされるポイントガードになりたい。JX-ENEOSでは必要かもしれないけど、他のチームだったら『別に吉田亜沙美はいらないよ』って言われるのではなく、『いや、欲しい。ポイントガードとして吉田亜沙美が欲しい』って言ってもらえるようなポイントガードになっていかなきゃいけないなって思っています。それが東京オリンピックの最終メンバーに入る最後の道だと思っています」