part1「リオオリンピック銀メダル、U19ワールドカップはアメリカを倒して世界一」より続く
悪かったときの経験を全てプラスに変えてステップアップ
12歳のときにU12セルビア代表キャンプに招集されたことで、道が拓けていったミラン・マチュワン。バスケットボールが国技であるセルビアの育成には興味があった。
「9~10歳くらいから学校でバスケに触れはじめます。最初から5on5が中心であり、小さい頃からゲーム勘を身につけるようにしています。それとは別に、個人技などを補うためのキャンプがあり、そこからプロクラブのユースチームに入って本格的にバスケをスタートさせます。そこで頭角を現した選手が、18歳になるとそのままプロ選手として契約できます。セルビアをはじめ、ヨーロッパでは大学を飛ばしてプロになる選手が多く、バスケにおいてはその分のアドバンテージがあると思います」
マチュワンが所属していたFMPベオグラードは、「セルビア内でも非常に有名なクラブのユースチームです。アンダーカテゴリーでもナショナルチームへ輩出する育成が整っていました」という環境で磨かれていく。U16、U18、U19、U20と各世代のセルビア代表として活躍していったマチュワンは、2009年のユーロバスケットではじめてフル代表に選出された。19歳のときだった。
トントン拍子でキャリアを積み上げる一方、その道のりはけっして平坦ではない。17歳からプロクラブでプレーするも、「最初は慣れるまでに大変苦労しました」。コーチの考えを理解し、チームメイトの特徴を把握しながら、その連携にも時間がかかる。日本で言えば高校2年生であり、フィジカルや経験の差から生じる苦労は当然のことでもある。一つひとつ学びながら、「いかに自分のリズムを確立し、軌道に乗せるかが一番大変でしたし、アジャストするのは難しかったです」と悩むマチュワンだったが、当時のコーチの英断に救われた。
「コーチにとって、入ってきたばかりの若い選手をゲームに起用することはとても勇気がいることです。でも、チャンスを与えてくれたことがひとつのポイントでした。今は、若い選手たちにプレータイムを与えることは難しくなっています。でも、そこが一番大事です。コーチが若い選手を思い切って起用してくれれば、その期待に応えようとプレーします。私は若いときにその経験があったおかげで、今があると思っています」