part2より続く
デンソーアイリスに移籍する前年、つまりトヨタ自動車アンテロープスの最終年、近藤楓はアジア競技大会の女子日本代表候補に選ばれていた。近藤はその大会への出場をひそかに、でも強く望んでいた。
「日本代表も3年目ですし、アジア競技大会の女子日本代表は若手が中心のチームだったので、そのなかで自分がどういう仕事ができるのかを楽しみにしていたんです。前年に優勝(3連覇)したアジアカップはヘッドコーチがトム(・ホーバス)さんでしたけど、アジア競技大会は薮内夏美ヘッドコーチ(日立ハイテククーガーズヘッドコーチ)のバスケットで戦うことが自分の中ではすごく楽しみで、頑張ろうというモチベーションでやっていたんです」
結果的には、今回の移籍を決断するきっかけとなったケガでその目標を断念せざるを得なかったが、そこでなしえなかったことの1つを移籍したデンソーで取り組もうとしている。
リーダーシップの発揮である。
けっして口数の多いタイプではない。むしろおとなしいというイメージのほうが先行している。しかし近藤は自身がプレーできていない時期でもデンソーの若い選手たちに気づいたことを伝えるようにしていると明かす。
「デンソーというチームは上下関係が厳しくないので、こちらからも言いやすいですし、下の子たちからもいろいろ聞いてくるので、自分も答えやすいというところはあります。いい関係で、いいコミュニケーションは取れているんじゃないかと思います」
髙田真希、伊集南、園田奈緒といったベテラン勢に、経験豊富で、聡明な近藤が加わったことはチームのメンタリティとしても大きい。
むろんプレー面でも近藤が加わることは大きい。これまで高田や赤穂さくらといった力のあるビッグマンに、伊集の1対1や赤穂ひまわりのドライブが組み合わさっていたデンソーのバスケットに、“飛び道具”ともいうべき近藤の3ポイントシュートが加わることは相手チームにも脅威を与えるはずだ。今シーズンから指揮を執るヴラディミール・ヴクサノヴィッチヘッドコーチも近藤の3ポイントシュートに期待をしてくれていると近藤が教えてくれた。