2月1日(土)、プロ野球がキャンプイン。オンシーズン中のバスケを差し置いて、ただの練習にも関わらず新聞紙面やテレビニュースはプロ野球に占拠されるおかしな季節がやって来た。もし、今回の主役が野球の監督して阪神タイガースにやって来ていたら、日本のダンカンが黙っておらず、幾重にも重なるテレビカメラに取り囲まれていたことだろう。
ドイツからやって来たカナダ人のジェームス・ダンカンHCは、埼玉県所沢市でバスケ会場としては少なくはないが1,554人の観客と3社ほどのメディアが見守る中、ひっそりと日本でのキャリアをスタートさせた。
細かい指導で目指すスタイルを浸透中
ダンカンHCがライジング福岡にやって来たのはオールスターブレイク中の1月23日。目指すスタイルを1日も早くチームに浸透させ、選手を意のままに動かさねばならない。キャプテン仲西 淳は「とにかく細かい」、bjリーグとして唯一8度全てのオールスターゲームに出場した青木 康平は「(オールスターで)いない間にフォーメーションが始まっていたので覚えるのに必至」と、新体制となった1週間を振り返った。
福岡からアウェイの地、埼玉に着くや否や「テープを巻いて、ガッツリ練習した」とも話していたのは、オールスター選手として休みのないベテラン青木。シーズン途中でチームの指揮を執ることは、時間との勝負でもある。「ようやくコーチのことを考えずに済む」と青木も仲西も歓迎しており、今シーズン初めて、選手として全力を注げる状態の到来に安堵の表情を見せていた。
埼玉ブロンコスを相手に79-66、初采配で初勝利を挙げたダンカンHCは、「今日は選手たちが誇りを持って戦ってくれたことをコーチとしてうれしく思っています」と選手たちを称えた。勝因として、チームディフェンスができたこととともに、総アシスト16本のチームプレイを挙げている。
現在36歳、カナダ生まれのダンカンHCのコーチ歴は、2005年よりドイツでスタート。2011-2012シーズンからドイツ1部リーグのBrose Baskets Bambergでアシスタントコーチを務める。そこで、ボールをシェアするバスケットボールを学んで来た。
「16アシストできたのは、私が目指すバスケットスタイルにとっては素晴らしいことです。しっかりボールを回せれば、コートに立つ全ての選手に得点のチャンスが生まれます。また、スペーシングも考えながらボールを回して行くバスケットを求めて行きたいです」
勝利とともに、ボールをシェアしたことでニューヒーローが生まれた。6本全ての3Pシュートを沈め、チームハイとなる18得点を挙げたのは、尊敬する選手にレジー・ミラーを挙げる#31高畠 佳介。シーズン前半までは19試合に出場し、3Pシュート12/39本(30.8%)で平均2.3点だった高畠が覚醒した。
試合後のロッカールームで、選手たちに勝利を祝福する声をかけたのも束の間、すぐさま気持ちを切り替えさせた。
「もっともっとレベルアップし、プレイオフを目指して準備して行かなければいけない。まだまだ道のりは長いが、しっかりステップアップする必要があることを理解し、準備してもらいたい。この勝利で満足して欲しくない。このチームはもっと良くなるし、私自身もチームを良くするために努力したい」
1週間に1度週末に行われることが多く、時に平日開催されるドイツリーグとは違い、2日連続同一カードを行うbjリーグはダンカンHCにとって初めての経験でもある。
「2連戦行われる明日が大事であり、大きな挑戦になる」と気を引き締めて臨んだ2戦目も72-64で埼玉を下し、2連勝を飾った。ダンカンHCが目指すボールをシェアするバスケットはこの日も展開され、アシストは15本。そして全選手をコートに立たせることができたことも大きな収穫である。
日本屈指のバスケ名産地でもある福岡県
最下位相手の2連勝でダンカンHCを評価をするには早計だが、コーチングしている時のパッションや目指すバスケットを2日連続して数字で残した結果を見れば期待は高い。今週末、福岡市民体育館で現在ウェスタンカンファレンス3位の京都ハンナリーズとの対戦が評価ポイントとなる。ダンカンHC自身も、「試合を通して学んで行ってる段階」であり、福岡の選手たち、bjリーグ、そして日本の生活を理解する日々が始まったばかり。その手助けとなるのがホームゲームでのブースターでもあるが、残念ながら近々に行われた1月10日に同じ福岡市民体育館での島根スサノオマジック戦は433人しか集客できなかった。昨日(2月2日)、バレーボールVリーグの試合が同会場で行われており、たまたまテレビ観戦していたところ非常に人が入っており、調べてみたら3,000人。けっして人が入らない場所ではない。
福岡は優秀な選手が育つ日本屈指のバスケ名産地。ライジングに在籍する日本人選手7人中5人が福岡出身で固めている。現在プレイオフ圏外(7位)にいる福岡の救世主として期待高まるダンカンHC。それ以上にバスケに熱い福岡のブースターが背中を押すことこそ、選手やチームを奮い立たせる大きな原動力となる。
まずは今週末、生まれ変わったライジングを評価しに、福岡市民体育館へ足を運んでいただきたい。
2月8日(土)19:00 福岡 vs 京都@福岡市民体育館
2月9日(日)14:00 福岡 vs 京都@福岡市民体育館
泉 誠一