シーズンで最も印象に残った選手(MIP)を選ぶのは実はとても難しい。派手さはなくともチームを支える地道なプレーが心に残る選手、目を見張るワンプレーが忘れられない選手、各賞の選には漏れたが何かの形で讃えたいと思わせる選手、角度を変えれば候補選手の顔ぶれも変わってくる。今回の選考には西村文男(千葉ジェッツ)、ジェフ・ギブス(栃木ブレックス)、安藤誓哉(アルバルク東京)、中山拓哉(秋田ノーザンハピネッツ)、金丸晃輔(シーホース三河)、川村卓也(横浜ビー・コルセアーズ)など多くの名前が挙がったが、最終的にこの賞は『昨シーズン最も成長(Improved)を感じた選手』として安藤周人(名古屋ダイヤモンドドルフィンズ)に授与することで意見の一致をみた。
青山学院大学時代からシューターとして名を馳せた安藤は、特別指定選手を経て名古屋入りし、期待のルーキーとして注目を集めた。昨年3月に発行されたフリーペーパーBasketball Spirits#19(これからの日本のバスケットを担うフレッシュマンたちの特集号)においても『新たな戦力としてコートで躍動するルーキーたち』の1人として取り上げられている。それから半年後、2年目のシーズンを迎えた安藤は60試合すべてにスタメン出場し、平均得点14.6、平均リバウンド数2.3、フィールドゴール成功率45.3%、3Pシュート成功率40.8%を記録した。中でも特筆すべきは名古屋の日本人選手の中で最も高い数字『13』をマークしたEFF(貢献度)だろう。チャンピオンシップ進出を賭けて西地区2位を争った京都ハンナリーズとの直接対決2連戦では1敗を喫した翌日に20得点を挙げる活躍で勝利に貢献。同時に強いフィジカルを生かしたディフェンスにも成長の跡がうかがえた。
しかし、3戦にもつれ込んだチャンピオンシップクォーターファイナルでは、琉球ゴールデンキングスの執拗な守りに苦しみ、頼みの3Pシュートを決めたのは勝利した第1戦の1本のみ。43-67で大敗した第3戦はわずか6得点に止まり、無念の思いを抱いたままシーズンを終えることになった。が、チャンピオンシップの舞台でここまで激しくマークされたのは、いわばエースとして認められた証でもある。先述したBasketball Spiritsのフレッシュマン特集で安藤の記事に付けられたタイトルは『エースへの変貌が待たれる』――謙虚な努力家として知られる安藤は、2年目のコートで見事その期待に応えてくれたと言えるだろう。
映像提供:バスケットLIVE
文 松原貴実
写真 安井麻実