新人戦はカテゴリーに関わらず、さまざまな粗が目立つものだ。何しろ準備期間が少ない。「第59回関東大学バスケットボール新人戦」は、スプリングトーナメントから約1か月で準備をしなければならないのだ。それまで経験豊富な3・4年生とコンビを組んできた選手からすれば、新しい組み合わせでプレーすると少しのずれが、チームにとっての大きな粗になっていく。
「新人戦のチームが始まったときはチームとしてまとまっていなくて、イライラすることもありました。正直、1・2回戦もどうかなという始まりでした」
そう振り返るのは筑波大学の1年生、中田嵩基である。
それでもスプリングトーナメントの決勝まで勝ち進んだ上級生たちの胸を借りて「優勝を狙えるかな」と思えるところまで、チームを上向かせた。結果的には準決勝で専修大に敗れ、3位決定戦で日体大を破って3位に終わったが、中田は勝ち負け以上の収穫を得たと言う。
「専修大戦も日体大戦もスタートダッシュはよかったんですけど、専修大のときは第3Q、第4Qで失速してしまいました。日体大戦でも同じように第3Qで失速しそうになったときにチームとしてまとまって勝利を迎えられたことが、大会を通して収穫になったところかなと思います」
カテゴリーが上がれば上がるほど、ゲーム内での、もしくは大会内での修正能力の質が問われる。前日の敗北を翌日の勝利につなげられたことは、筑波大の1・2年生にとって貴重な財産になったはずだ。
中田自身に目を向けると、彼は国際大会の経験が豊富なポイントガードである。中学3年生でU16アジア選手権に出場し、高校2年生のときは八村塁らとともにU19ワールドカップへも出場している。ボールハンドリングがよく、視野も広い。バスケットIQが高く、判断力にも長け、言葉でチームをリードする力もある。
しかし3位決定戦で披露したのはそうしたオフェンス力ではなく、フィジカルなディフェンスだった。結果として相手チームトップの18点を取られているのだが、日体大のオフェンスの起点となる井手拓実を終始苦しめ、6つのターンオーバーを犯させている。
「今日はフォワード陣が得点を取ってくれると信じて、自分はディフェンスに専念する意識を持ってプレーしました。井手選手は高校時代とは違って、すごくシュートを狙うようになっているし、ガンガンアタックするようにもなって、すごく嫌な選手になったと思うんです。ピックを使ってからのシュートやアシストもあるし。ただ自分としてはその起点を抑えれば日体大の得点は止まると思っていました。結果として日体大の67点というのは今大会の中で見ても少ないと思います。そこは井出選手の得点をうまく抑えられたからだと思います。もちろん第3Qの途中で少しシュートを打たれてしまいましたけど、それ以外はチームとしても、個人としてもうまく抑えられたと思うので、そこがキーポイントになったのかなと思います」