※本記事はバスケットボールスピリッツのWEB化に伴う、2018年7月末発行vol.23からの転載
MIPとは、最も成長した(Improved)選手に与えられる賞である。少しずつ経験値を積み上げながらプレータイムを伸ばし、チームの主力として飛躍した若い選手が選ばれるケースが多い。しかし、弊誌アワード選考委員会での結果はその固定概念を覆す結果となった。33歳、トップリーグで11シーズンを数える大ベテランの竹内譲次が、満場一致でMIPに輝いた。
チャンピオンシップセミファイナルで敗れたシーホース三河の敵将、鈴木貴美一ヘッドコーチは「オンザコート1のところで譲次君にシャットアウトされた。シーズン中もそうだったが、彼がジェイアールをしっかり抑えていた。しかもヘルプしたわけではなく、一人で守っていたことでオフェンス面の計算が狂ってしまった。平均15点ほど獲る選手が活躍できなければ、やっぱり負けてしまう」と竹内のディフェンスを高く評価した。弊誌アワード選考委員会の記憶に刻まれていたのもディフェンスである。
出場時間は平均20分55秒、ぴったり20分だった試合が29回と半分近くあり、オンザコート1要員でしかなかった。しかしチャンピオンシップになると、平均22分41秒とオンザコート2の時間帯にも食い込み、ルカ・パヴィチェヴィッチヘッドコーチに認められた証拠である。シーズン後の日本代表でも、「譲次は素晴らしい働きをしてくれた。特にディフェンスが良かった」とフリオ・ラマスヘッドコーチは称えている。オーストラリア戦ではNBAプレーヤーであるソン・メイカーを封じ、歴史的勝利に貢献した。
来シーズン(2018-19)は全ての時間帯においてオンザコート2となり、ベンチ入りできる外国籍選手は3人から2人に制限される。無尽蔵なスタミナがあれば、40分間コートに立ち続けることもできるが、それは難しい。連覇を目指すA東京にとっては竹内の存在が大きくなるとともに、その真価が問われるシーズンになる。
ワールドカップで驚きと感動を届けてくれたサムライブルーの長友佑都は、自他共に「おっさん」と呼ばれていた。実年齢は31歳──2つ年上の竹内もまた、トップアスリートの世界においては〝おっさん世代〟と言えよう。時折、竹内自身も「こんなおっさんでも…」とコメントしている。そんなおっさんでも飛躍できた竹内の活躍は、同世代以上の人たちに大きな勇気を与えてくれた。成長するのに年齢制限はなく、いつからでも遅くはない。それを証明してくれたことに拍手を送りたい。
文 バスケットボールスピリッツ編集部
写真 吉田宗彦