part2より続く
常に自分に矢印を向けながら、チームを勝利に導きたい
アメリカで実感した“本気”を広島ドラゴンフライズの岡本飛竜は今も日々の練習で実践している。取材がおこなわれたのはホームに山形ワイヴァンズを迎える数日前だったが、岡本の表情からは常に鬼気迫るものが感じられた。
その週のチーム練習は岡本自身も認めるほどハードなもので、長いシーズンの蓄積も重なって、選手たちの多くには疲労が見え隠れしていた。それに気づいているベテラン選手はあえて笑顔を作り、リラックスするような雰囲気を生み出そうとしていた。しかし岡本はそれに乗ることなく、本気の姿勢を崩さなかったのだ。
「もちろんそれは意識しています。体育館にいる時間なんて、そんなに長くないじゃないですか? そこにどれだけ集中力を持っていけるか。自分を見つめ続けることができるか。その差をほかの人とつけることは必要かなって思っています」
もちろん周りに目を向けないという意味ではない。ポイントガードである以上、周りに目を向けながら、しかし必要以上に周りに気を取られすぎず、自分自身にもしっかりと向き合う。これはけっして簡単な作業ではない。
学生の頃はどこか「自分、自分だった」と岡本も認める。すべてはプレータイムを得るためだ。そうしなければプロへ進む道さえも絶たれてしまうと考えていたからである。
ただプロになってからは違う。チームを勝たせるために自分をどうアピールし、周りをどう生かしていくか。それは島根スサノオマジックの1年目と2年目でスタッフを含めたメンバー構成が大きく変わり、3年目に移籍をするという、いわば3年間、ほぼ同じメンバーで戦ったことのない経験から来るものでもある。
「選手として自分の持ち味や魅力をしっかり伸ばしつつ、周りをしっかり理解して、チームになじんで、チームをいい方向に導く。その大切さをこの3年間でかなり学びました」
そして岡本はこう続ける。
「環境が変わっていくなかでも自分に……いいときも悪いときも他人のせいにせず、常に自分に矢印を向けて、自分がどう頑張ったらチームに貢献できるか。そのためには練習しなければいけないですし、そういうことを考えるようにしています」