若き日本代表であり、CMにも起用されている古澤拓也選手(20歳)と鳥海連志選手(19歳)を擁するパラ神奈川スポーツクラブは、天皇杯 第46回日本車いすバスケットボール選手権大会での上位進出が期待された。しかし結果は、ワールドバスケットボールクラブに51-58で逆転負けを喫し、1回戦敗退となった。
ワールドバスケットボールクラブに敗れた後、若きエースたちが記者たちに囲まれる中、いぶし銀の活躍をした園田康典選手(50歳)への取材をリクエストする。
「え?活きのいい若い選手に聞けば良いのに…俺なんかでいいの?」
長くチームを支えてきた園田選手だからこそ、敗因とともに古澤選手と鳥海選手についても話を聞きたかった。
前半をリードし、さらにエンジンがかかる後半に引き離すと予想して試合を見ていた。しかし、試合巧者のワールドバスケットボールクラブのペースに徐々に引き込まれ、空回りするようにシュートも思うように決められず、悔しい結果となった。
「日本代表とパラ神奈川スポーツクラブのバスケット自体で違う部分があるのかもしれません。でも、どのチームにも合わせたプレーができるようになれば彼らのプレーの幅も広がるし、成長できるのではないかと思っています。最初にディフェンスが機能していたところまでは良かったのですが、その後のオフェンスでのイージーシュートを決めきることができませんでした。そこが後半に響いてしまったかなと思います」
園田選手が指摘した前半、ディフェンスに成功し、次々と速攻を出すパラ神奈川スポーツクラブだったが、ノーマークのシュートを決めきれず。確実に決めていればセーフティーリードも得られていただけにもったいなかった。
「あの場面で若さが出てしまいましたね。彼らは日本代表であり、このチームを勝たせなければいけないという責任を感じながらプレーをしているんだと思います。このチームは日本代表とは違ってサイズが小さいので、やっぱりボールを回しながらみんなでシュートを決めていくスタイルです。あまりパスが回らなかったこともうまくシュートにつながらなかったです」
試合後、古澤選手は「ふがいない。僕と鳥海がこのチームの中心であり、僕たちの出来が良くなければ、こういう結果になってしまう」と自責の念に駆られていた。ワールドバスケットボールクラブ戦での鳥海選手は18点を挙げたが、古澤選手は7本放った3Pシュートを1本も決められず、9点に終わっている。50歳の園田選手はスタメン出場し、26分間コートで戦い続けた。「彼らが入ってくる前は、パラ神奈川スポーツクラブの第一線でプレーしてきましたし、その意地があります」と最後まで勝利を目指し、10点を記録している。残り時間と反比例するように点差が離れていき、悔しい表情を見せてもいた。
「これだけ長くやってきても、やっぱり難しい競技です。何をどうすれば良いかという答えは分からない。でも、初戦で負けたことでもう少しがんばらないとな、と思わされています」
古澤選手と鳥海選手の存在がチームに活気を与え、相乗効果をもたらせているのは間違いない。
若い二人は敗れた責任を感じており、続く順位決定戦に向かうにあたり、メンタルが回復できるかが心配された。しかし、園田選手は一蹴する。
「大丈夫ですよ!そうじゃなければ、代表なんてやれない。こんなことでメンタルが崩れるようではね」
それは杞憂に終わり、続く5-8位決定戦の千葉ホークス戦で古澤選手は28点、鳥海選手は27点と本来の力を見せつける。初戦の1敗こそ痛かったが、その後は全て勝ち続け、昨年より一つ順位を上げる5位となり、少なからず成長は見て取れた。
この大会での悔しさは、これから待っている日本代表で挽回してもらいたい。6月8日(金)〜10日(日)に武蔵野の森総合スポーツプラザにて、世界の強豪を迎えて行われる三菱電機 WORLD CHALLENGE CUP 2018が開催される。2020年東京パラリンピックへ向けた強化試合であり、今から世界レベルを目の当たりにでき、見ておくべき試合である。
文・写真 泉 誠一