読者のみなさんは「メリノール学院」をご存じだろうか? 正式には「四日市メリノール学院中学校・高等学校」だが、どうだろう? 校名を見れば何となくわかっていただけそうだが、同校は三重県・四日市市にあるキリスト系の中高一貫の私立校である。そんな学校がなぜBasketball Spiritsに? バスケット界ではまだまだ全国的にも知られていないし、実際全国大会へ出場したことは一度もない。しかも現在は高校のバスケット部はなく、中学バスケット部のみである。そんなチームがなぜ ── 。
メリノール学院は昨年から中学バスケット部に力を入れ始め、その一環として新しい体育館を建設した。冷暖房完備で、天井も高く、バスケットコートが2面取れる広さを持つ。その2面はともにセンターサークルとペイントエリアに色づけがなされていて、得点ボードは電光掲示板。更衣室はもちろん、シャワー室も完備している。「けっしてバスケット部専用の体育館ではない」とチームを率いる稲垣愛コーチは言うが、一方で月曜日以外は毎日使わせてもらっているとも言うから、実質バスケット部専用の体育館と言っても過言ではないだろう。
今年4月4日に体育館が完成し、同30日にはオープニングゲームがおこなわれた。その対戦カードこそがSpiritsに掲載しようと考えた最大の理由である。あの愛知学泉大学と桜花学園高校が、カテゴリーを超えて、系列でもない学校のオープニングゲームを務めたのである。
桜花学園はインターハイの地区予選が始まり、地元インターハイに向けて、さらなる強化を図りたい時期だが、愛知学泉大はまさに「第56回東海学生バスケットボール大会」の真っ只中だった。前日にも試合があり、ゴールデンウイークの後半には留学生を擁し、近年力をつけてきている名古屋経済大学と戦おうかという時期に、このイベントに参加している。
それらはすべて稲垣コーチの人徳のなせる業である。彼女は桜花学園の井上眞一コーチ、愛知学泉大の木村功コーチの懐に飛び込み、コーチとして多くのことを学んでいる。一方で稲垣コーチがメリノール学院に奉職する前、公立高校の講師をしているときに指導していた四日市市立朝明中学の卒業生が桜花学園、愛知学泉大に進んでいる。井上コーチ、木村コーチにしてみれば、実際の教え子ではないものの、コーチとしての愛弟子 ── 彼らにはそんな感覚すらないだろうが ── のため、またこれまで多くの選手を育て、さらに情熱を持って育成に取り組もうとしている中学指導者の新たな出発のため、一肌脱ごうと考えたわけだ。