2018年の開幕を告げる天皇杯で最初の勝利を飾ったのは京都ハンナリーズだった。西宮ストークスを相手に内外にバランスの良い攻めを見せ、前半を58-29と圧倒。4Qにはやや集中力を欠く場面はあったものの95-72の大差をつけて準決勝への一番乗りを果たした。この一戦で3ポイントシュート4/4を含め15得点をマークした#33内海慎吾の顔からも笑顔がこぼれる。「トーナメントの第1試合ということで、いかに集中力を持って臨めるかが大事でしたが、そこはできたのではないかと思います」。
チーム最年長(33歳)の内海は能代工高校から東海大学に進み、日本を代表するシューターだった父(内海知秀・前女子日本代表チームヘッドコーチ)のDNAを引く選手として活躍。三菱電機(現名古屋ダイヤモンドドルフィンズ)、和歌山トライアンズを経て、京都ハンナリーズで4年目を迎える今季は同じく33歳の岡田優介とともに心技両面でチームを牽引する存在だ。新春の舞台で幸先の良い1勝を挙げたキャプテンに今季のハンナリーズの武器、そして、次戦に向けての意気込みを聞いた。
――今日は予想以上の大差でしたが、西宮ストークスとはBリーグのレギュラーシーズンで2回戦って1勝1敗で星を分けていますね。
はい。僕はあの1勝1敗があるから今日の勝利があったと思っています。あそこで簡単に2勝していたら、多分ここまで点数は離れなかったのではないかと。敗れた経験があったから、今日も負けてしまうかもしれないという危機感を持って臨めました。それが入りの集中力につながったような気がします。
――天皇杯予選の3次ラウンドではアルバルク東京を下してファイナルラウンド進出を決めました。アルバルク東京は日本代表メンバーを3人欠いていたとはいえ、タレントが豊富な強豪チームです。そこに競り勝ったことも自信になったのでは?
今、あらためて振り返ると、アルバルク戦は本当にいい試合をすることができました。実はその前に戦った島根スサノオマジックとの試合が最低だったんです。試合の入りもシーズン通して最低でした。とにかく反省点が多かったんですが、それを修正できたのがアルバルク戦だったと思います。そういう意味ではやればできるという手応えはありましたね。
――今年のハンナリーズのテーマといったものはありますか?
ボールを前へ前に飛ばすということ、どんどんボールをプッシュして速い展開にもっていくことを意識しています。今年は走れる選手が多く入ってきたんですね。たとえば永吉(佑也)はあのサイズ(198cm)で走れますし、(晴山)ケビンはもちろんのこと、ガードの伊藤(達哉)はボールを持ったらチームの誰より速く走ります。それがうちの強みてですし、それを生かすにはやはりアップテンポなバスケットになります。少しずつですがそういうリズムができていると思います。
――レギュラーシーズンを見ていると、粘り強いディフェンスで劣勢を覆す場面も目立ちました。
粘り強いディフェンスは全員が意識しているところです。今日の西宮戦でもたとえどんなに点差が開いても油断をしてはならない。ドゥレイロン・バーンズ選手がいつ爆発するかわからないから気を引き締めていこうという思いはありました。今日は特にうちの4番ポジションの日本人選手が体を張ってハッスルプレーを見せてくれたと思います。
――内海選手自身も3ポイントシュートを4本パーフェクトで決め、シューターとしての存在感を示しましたね。
いえ、今シーズンに関しては僕は自分をシューターだとは思っていません。今のチームには岡田を筆頭に僕よりシュートがうまい選手がいっぱいいますから(笑)。正直、うちは毎試合、誰が爆発するかわからないチームなので、僕以外の誰かが「今日は来てるな」と思ったら、そいつがその日のヒーローになればいいし、そうなり得る選手がうちには揃っています。だから、さっきも言いましたが、このチームのシューターが自分だという意識はないんですよ。
――では、試合で担う自分の役割をどのように考えていますか?
1試合を通して、今、何をしなければいけないのかを常に考えられる選手でいたいと思っています。試合前のスカウティングで相手のここだけは抑えなければいけないとか、ここは決められてはいけないとか、そういうポイントを頭に入れて、試合中それを決して忘れない自信はあります。もちろん、自分のシュートが決まってホットなときは自分のオフェンスに目が行きがちですが、それでもチームで戦うのに必要なポイントは忘れることなくコートに出ているときは、コート上のコーチというか、そういう存在でありたいと思っています。
――京都に移籍して4年になりますが、今年のチームは大きく様変わりした感があります。実際にプレーしている選手としてはどんな手応えを感じていますか?
一言でいえばプレーしていてとても楽しいです。去年までは自分がやらなきゃ、自分がチームを引っ張らなきゃという気持ちが常にどこかにあったんですが、今年はベンチにいて試合を見ているだけでも楽しい(笑)。こんなことを言うと誤解されちゃうかもしれませんが、それほど頼もしい選手が集まってくれたという印象があります。うちはまだまだ上に行ける力があると信じています。だからこそ次の準決勝も全員の力で勝ちに行きたいですね。
第93回天皇杯・第84回皇后杯 全日本バスケットボール選手権大会
文・松原貴実