『インカレ1勝。』の抱負を掲げていたのは、5回目の出場となる東海大学札幌(北海道1位)だ。過去4回はいずれも100点ゲームの大差で1回戦負けを喫している。5回目のインカレ(第69回全日本大学バスケットボール選手権大会)で初勝利に挑む今年の相手は、関西学院(関西3位)だった。
51-44で終えた第3クォーター時点でリードしていたのは、東海大学札幌の方である。だが、勝った経験がないことで浮き足だってしまったか、そこからミスが目立ち始めた。ジリジリと関西学院に点差を縮められ、残り5分24秒、相手のバスケットカウントで逆転を許してしまう。関西大学に移った流れを止めきることができずに65-78で逆転負け。今年も目標を達成することはできなかった。
劣勢に立たされる中、3Pシュートを決めるなど孤軍奮闘していたのが齊藤亮太選手である。「最終的に負けてしまったのは本当に悔しいことです。勝てなかったのは4年生の力不足でしたし、率直に言って悔しいです」と自責の念にかられる。持ち味であるはずの「ディフェンスをがんばること」が足りなかったことを反省点として挙げていた。
成長を実感できるインカレの舞台
北海道からインカレへの出場権は今のところ2枠しかない。「全国に比べたらレベルは低いですが、道内では力が拮抗しているチームばかりです」という現状があり、インカレ出場も容易ではない。1年生の時には出られなかった。だが、その後は3年連続出場を果たし、最後も全国の舞台で腕試しができた。
「初めて出場した2年生のときに比べればインカレにも慣れてきましたし、この雰囲気にのみ込まれずに自分たちのプレーをできるようにはなりました。今回は、気持ちが乗ってシュートを決めることができたかなと思います。毎年、自分たちの成長をこの舞台に立つことで実感しています。今年も勝てなかったですが、今までで一番良い試合はできました」
ラストゲームで18点、14リバウンドのダブルダブルの記録を残した。
全員でリバウンドやルーズボールに飛び込むのが「チームカラー」と自信を持っていた。「がんばれば絶対に結果につながると思ってそこは徹底してきました」。一生懸命ボールに食らいついてはいたが、残念ながら結果にはつながらなかった。しかし、東海大学札幌のチームカラーだけはコートで表現できており、見ていた人たちにも伝わったはずだ。
後輩たちへと受け継がれる「インカレ1勝。」
インカレでの初勝利は今年もかなわなかった。それでも「楽しかったです」と齋藤選手は答えており、充実した4年間だったことがうかがい知れる。
「最後は自分たちの代で北海道1位となってインカレに出場でき、勝てなかったですが今までで一番良い勝負はできたと思います。本当に楽しい4年間のバスケット生活でした」
インカレで1勝を挙げる目標は後輩たちへと受け継がれていく。
「後輩たちは、来年もこの舞台に帰って来られるだけの力を持っています。最後の思いであるインカレ1勝は後輩たちのみんなに託しました。後輩たちは1年生のときから毎年のようにインカレに出ていますが、来年も絶対に行けるという気持ちのまま試合に臨んでしまえば、厳しい結果になってしまう恐れもあります。いつでもチャレンジャー精神を忘れずに戦ってほしいです」
今後は、北海道全体でインカレの勢力図を変えるような期待も合わせて持っている。
「力の差はあり、能力ではなかなか勝てないですが、北海道勢は泥臭い部分でがんばって上位を目指せる力を持っていると思っています。来年すぐに結果につなげるのは難しいですが、いつかは北海道勢が上位に行けるようになってほしいです」
齋藤選手自身、まだまだバスケットは続けていきたい気持ちはあり、「やるからには本気でやりたい」そうだ。次の夢はプロ選手になることではあるが、「そんな実力もない」と謙遜していた。もし、その夢が叶わなくても「今後もバスケットに携わっていきたい気持ちはあります」と続けている。よく言われることだが、バスケットは麻薬のようなものだ。一度ハマればなかなか抜け出すことは難しい。筆者もその一人であり、これを読む読者も同じ中毒者であろう。どんな形であれ、まだまだバスケットを楽しんでもらいたい。
文・写真 泉 誠一