優勝した栃木ブレックスの元メンバーであり、長きに渡ってリーグはもとより、日本代表でも活躍されたベテランたちに集まっていただき、酒を酌み交わしました。酔いが進んでくると、ついつい熱い話になってしまうのは選手も、ファンも同じこと。バスケを愛する気持ちは変わりません。Bリーグ元年を終えて見えた反省点を振り返るとともに未来に向けても語り合い、誌面には掲載できずにこぼれた話を前後編でご紹介していきます。
Bリーグとなって変わった点
伊藤 やってるバスケット自体はそんなに変わらないけど、試合数が増えたことでチーム内でローテーションできるだけの戦力がないと戦い方としてしんどくなったような気がする。前までは7〜8人のコアメンバーさえいれば戦えたけど、それだけではこの長いシーズンはきつかった。仕事を分担しないとシーズンを乗り越えられないと感じた。
網野 環境は全然変わった。アリーナの雰囲気も変わったし、それぞれのクラブが相当努力をしたと思う。ブレックスも天井からセンタービジョンをつけたことで演出も大きく変わった。お客さんの数は明らかに違うし、チケット自体が売り切れる早さが全然違った。
竹田 一度、試合後に観客のみんながコートに下りた時があって、その時はすごく多いなってあらためて思った。
ーー 皆さんのいる3クラブを筆頭に、声を出して応援するファンが増えた気がする。
竹田 確かに。
伊藤 声を出して応援するお客さんは確かに増えたと思う。栃木にしても昔からあったもの以上に、今シーズンは圧力があった。千葉は元からお客さんは入っていたけど、シーズン当初は栃木戦で(田臥)勇太がおしゃれなパスを出すとワッと沸く。「敵チームなのになぁ」と思っていたけど、終盤になるにつれてそれが変わっていった。普通にバスケットを見て楽しんでいたファンの人たちが、ジェッツを応援しようと思って会場に足を運んでくれる熱気が増えてきた感じがした。ホームゲームが少しずつできあがってきている。
ーー 天皇杯に優勝したことで加速した感はある?
伊藤 ジェッツがあることは分かっていたと思うけど、あの時から「自分たちのジェッツだ」と思ってくれる人が増えたと思う。それは大きな違い。
竹田 どれくらい入ってるの?
伊藤 平均で4503人。
竹田 平均?
網野 ヤバいね。
伊藤 千葉ポートでは7千人が入った。それはすごかった。本来そこまで入るキャパではなかったので、運営側として大変な部分や問題点も多々あったと思うけど、集まってもらえたことが一つの成果になった。
Bリーグの課題点
伊藤 選手会でも課題点を聞かれた時、初日の遅い時間と2戦目の早い時間の連戦を改善して欲しいと一つの提案として挙げさせてもらった。やっぱり1試合1試合のクオリティーを上げていかないといけないと思う。そのためにもリカバリーの時間を確保してもらい、できる限りクオリティーにフォーカスしていきたいが、連戦自体がきつい状況も否めない。
竹田 (連戦が続く試合スケジュールは)他の国のリーグではないことだからね。
伊藤 (元栃木のヘッドコーチであるアンタナス)シレイカも戸惑ってた。
網野 そのためにはホームアリーナがないと始まらない。設営と撤収をどれだけやるんだという手間を考えると今の状況では無理。
竹田 試合をするために丸々アリーナを抑えないといけないわけで、平日開催が入ってくると週2回の撤収はきつい。
網野 無理っすよ。死んじゃいます。
伊藤 両サイドにいる広報がすんごい頷いている。
ーー アリーナが大きな課題であり、Jリーグはそのスタジアム在りきから始まった。
竹田 5千人アリーナを確保すること以上に、自分たちが優先的に使えるホームアリーナを持つことの方がハードルが高い。
伊藤 千葉は自前ではないけど、優先的に使わせてもらえるようになってる。
ーー 勝手なことを言えば、プロ仕様のアリーナレイアウトがスタンダードで、他が借りるときにそれを崩して広く使えるようにすれば良い。一般として借りる方も、プロと同じアリーナでバスケができるのはうれしいとも思う。今後、練習を含めてプロクラブ側の利用頻度が増えれば必然的にそうなっても良いのでは?
網野 それができれば、チャンピオンシップもファイナルも含めて、ホーム&アウェーで連戦できるようになる。あの一発勝負だから、緊張感が生まれたというのも一理あるとは思うけど、やっぱりあれだけ良い試合となって人が集まるならば、5戦や7戦をやれる可能性だって出てくる。
伊藤 Bリーグとしてあれだけ地域密着をうたいながら、最高峰の試合が別のところで行われるのはさみしい。
網野 さみしいよね。MCとか演出が全て中立になってしまう。ファイナルは1万人が入って、それぞれのチームの文化としてファンが声を出すようになってきているのでそれなりに見えたけど、その全部がもしブレックスの黄色に染まったり、例えば千葉の赤に染まったりする中でホームゲームが行われれば、ものすごい盛り上がる。正直、ファイナルの集客はすごかったけど、物足りなかった。普段の栃木や千葉のホームゲームの盛り上がりを知ってるだけにそう思ってしまう。
伊藤 どことなくファイナルよりも、栃木ホームのクォーターファイナルやセミファイナルの方が盛り上がりは感じた。
網野 ブレックスアリーナが揺れたからね。
伊藤 そこを目指していかないといけない。元をたどれば、週一回、日曜日に行われていた実業団リーグのフォームのまま今も来てしまっている。月曜日に休んで、その後に準備して週末試合という流れでずっとやってきている。今は土日に試合をする上に、ウィークデーもガッツリ練習しているわけで、若い選手でも身体はしんどくなる。連戦はさておき、平日でもどこかで試合が行われるようになってくればおもしろいと思うし、実はそっちの方が身体も楽になるのかなとも思う。ガッツリ練習して、試合数が多いと、若い選手でも故障してしまってる選手がなんとなく増えている気がする。その辺のやり方は改善が必要。
文・泉誠一 写真・安井麻実