風貌からして「やんちゃ」な雰囲気を醸し出すNOBUCHIKA。憎まれ口を叩き、相手を挑発するようなプレイスタイルは「ショーアップ」され、ファンの喝さいを浴びる。
「無理してるわけじゃないし、それが“素の自分”。ボーラーが楽しくなければ観ているほうもノれないでしょ」
ショーアップしているわけではなく、ありのままの自分をさらけ出して勝負する。その持ち味は屈強な体躯を生かした1on1と3ポイント、そして「本気で遊ぶ」無邪気なストリートボーラーマインドだ。個性派が揃うストリートボーラーの中にあってひときわキャラが立つNOBUCHIKA。「3×3男子日本代表候補」に名を連ねた実力の持ち主でもある。
柔道でオリンピック? それもアリ(笑)
──:バスケの前は柔道。まったく違う世界ですね?
NOBUCHIKA:始めたのは小学校1年ぐらいからかな。友だちの親が勧めてくれたんですけど、やんちゃな子どもだったみたいでどこかで発散させようと思っていたのかな(笑)やってみたら面白くて、ずっと続けました。
──:戦績はどうだったんですか?
NOBUCHIKA:9年ぐらいやって、県大会で勝ったり……部活としてはやっていないんですが、黒帯を取ってやめました。中学生で黒帯は凄くないですか!? 僕らの頃から14歳で取れるようになって、もしかしたら第1号というか、一期生じゃないですかね。小学生の県大会で優勝しましたよ。
──:柔道でオリンピック目指してもよかったのでは?
NOBUCHIKA:それもアリ、ですよね(笑)いくつかの高校から「柔道」でスカウトされました。でも中学3年からバスケを始めて、それにのめり込んでいたから……バスケは1校だけ、桐光学園からお誘いを受けたんです。
──:バスケは中学生になってから本格的にスタート?
NOBUCHIKA:遅かったですね。バスケは好きだったので、遊びでやったり、NBAを観たりはしていました。それでバスケを選んだ。中学校の最後の試合を桐光学園の顧問、高橋 正幸先生が観に来てくれて、それで誘われました。その1試合を観ただけだったんです。でも、理由があったらしく……僕は覚えていないんですが、1分で9点ぐらい取ったらしいんです。シュートが落ちても、全部自分でリバウンドを取って押し込んでしまう、みたいな。その姿勢がすごく良かったって言っていただきました。
『SLAM DUNK』は読んでなかったけど
──:柔道からバスケは、ガラリと違いますよね?
NOBUCHIKA:まったく違いますよね。ただ、柔道をやっていたので足腰が強くなった。相手と対面して何かをするのは苦にならないし、ドライブインもそこそこOK……シュートも入ったんで、一人目立って楽しくて仕方がなかったですね(笑)
──:バスケに興味がったのはどうして? 『SLUM DUNK』を読んだとか、M・ジョーダンを観ていたとか?
NOBUCHIKA:『SLUM DUNK』は読んでなかったけど(笑)ジョーダンはよく観てました。“凄いなぁ”“カッコいいな”って。ルールはよくわからなくても、観ればカッコいい。ダンクはもちろん、アリーウープやチームの一体感とか、1プレイごとに「ドカン!」とアリーナ全体が盛り上がる、そんな感じが最高ですよね。
──:ジョーダンのカッコよさとチームスポーツに魅力を感じた? 柔道は個人競技だし「礼に始まり、礼に終わる」みたいな……!?
NOBUCHIKA:そうですそうです。でも、そこから(スポーツに)入れたのは良かった。まったく違う種目を経験したから、自分なりの視点でバスケが見たり、プレイの幅が広がったりしたと感じています。高校では県2位が最高。1位しか全国大会に行けなかったけど、関東大会や(公式大会ではない)東日本の大会などでベスト5に入ったことはありました。高久くん(順/UNDERDOG)は同い年で向こうは能代工。テレビで観ていましたよ。当時は憧れの存在というか……バスケを続けたお陰で今は同じチームでプレイしている。それって凄いなと思います。
──:高校でのバスケライフは順調でしたか?
NOBUCHIKA:高橋先生との出会いがなかったら、今の自分はない。バスケの基本を教わったのは高校から。何度も怒られたし、デビュー戦は5分で退場しました。
──:払い腰か、一本背負いで相手を投げたとか?
NOBUCHIKA:いやいや違いますよ~。オフェンスファウル3回、ディフェンスファウル2回で退場。なにもできない、なにもわからない。なのに強い高校に入ってしまった……桜木花道の気持ちがよくわかります(笑)
──:「そこそこできる」って思ってたのに?
NOBUCHIKA:そうなんです、でも何にもできなくて、辞めちゃいたいって。でも、バスケで入ったんだからやるしかない。その3年間は「バスケが好き」とか言いながら、辞めたいと思ったことは何度もあります。地獄でしたよ(笑)でも、引退してみるとやっぱり「バスケが好き」やってないと落ち着かない。今はストリートがホームで、一番落ち着くプレイグランド。一人でシュートを打っているだけで、落ち着くんです。
バスケの面白さを表現し伝えて行く
──:大学でのプレイは?
NOBUCHIKA:(競技バスケは)1年で終わり。19歳でストリートバスケに出会っちゃった。沖縄出身の友だちからストリートバスケを教わったらそれが面白くって、もう抜けられない(笑)気づいたら10年。この世界はFAR EAST BALLERSの練習生からスタートしてデビューというか、プレイを始めました。
──:今はUNDERDOGの一員として活躍していますが?
NOBUCHIKA:以前はF’SQUAD、M21さんも一緒だったんですが抜けちゃって。個人的に慕っていたので、僕も抜けることにしました。「F」に不満があるわけじゃなく、M21さんと同じチームでプレイしたかった。
──:その辺りの懐の深さ(自由度)はストリート(SOMECITY)の面白さのひとつなのでしょう。3×3日本代表候補にも入りましたね?
NOBUCHIKA:凄いですよね。3on3(ストリートバスケ)で日本代表チームが結成されるなんて思ってもいませんでしたから。以前は考えもしなかったことですが、自分たちが何のためにストリートバスケを続けてきたのか、その結果というか証しになる舞台ができたということですよね。目指すところでもあり、楽しみでもあります。ストリートというと、プロ(bjやNBL等々)へ行く前段階と捉えるボーラーやファンも多いと思います。でも、僕はまったく逆。ここ(ストリート)にこだわりを持っていますし、こここそが自分を表現できる場だと思っています。ここでプレイし続けたいし、ここでお金を生むようにしていきたい。それがモチベーションなんです。だから、周りに放つパッション(情熱)というか、パフォーマンスが違う。常にお客さん目線でプレイしたいですし、「またアイツを観たいな」って思われる選手になりたい。俺に金を払ってもらえる選手になりたい。“プロ”の考え方が違うのかも知れないし、その差をはっきりしたいなと思っています。一見ヘラヘラしたプレイに見えるかも知れませんが、面白く、楽しくプレイしている姿を観て欲しい。熱く、アグレッシブに挑みかかるようなパフォーマンスを観て欲しいんです。
今、日本のストリートボールシーンをリードするSOMECITYには、彼らが創り上げてきたバスケカルチャーが息づいている。“主役は俺!”そう言ってはばからないボーラーが集まり、「それぞれの夢に向かって驀進中!」そんな熱気が充満する会場に足を踏み入れれば、虜になること請け合いだ。
ちなみに、NOBUCHIKAの夢は子どもたちにバスケの楽しさを伝えること。料理の腕にも自信があり、食事のことや体づくり、礼儀作法も含めた指導者(というかバスケの上手いアニキ!?)になることだという。その実現に向けては模索中だが、真面目に一歩ずつ進んで行くだろう。
文・羽上田 昌彦(ハジョウダ マサヒコ)
スポーツ好きの編集屋。バスケ専門誌、JOC機関紙などの編 集に携 わった他、さまざまなジャンルの書籍・雑誌の編集を担当。この頃は「バスケを一歩前へ……」と、うわ言のようにつぶやきながら現場で取材を重ねている。 “みんなでバスケを応援しよう!”を合言葉に、バスケの楽しさ、面白さを伝えようと奮闘中。