Photographs by Munehiko Yoshida
【セミファイナル】
東京EX ○84‐73● 大塚商会
東京EXとファイナル進出を争ったのは、レギュラーシーズン2位に大塚商会。2014-2015シーズンはあと一歩のところでプレーオフを逃したが、#91落合知也やルーキー#14兒玉貴通の成長(2015年にアーリーエントリー)、#16鮫島宗一郎、外国籍選手#4レイモンド・ニクソン、#23ジャスティン・ヘラルドらの加入によって一気に力を伸ばして来たチームだ。最終節で直接対決があり、1勝1敗とほぼ互角の成績を残して来た。
その難敵に対し、東京EXは先制攻撃。第1Pで25-6と大きくリードすると、徐々に追い上げられながらも逃げ切りに成功し、三連覇への挑戦権を獲得した。
豊通名古屋 ○76‐64● パスラボ山形
34勝4敗とダントツの強さを見せた豊通名古屋が対戦したのはパスラボ山形。インサイドの#25マグナム・ロール(以前、三菱電機ダイヤモンドドルフィンズ名古屋でプレー)、日本で実績のある#3ウィリアム・ナイトに、アーリーエントリーの#14高橋 祐二、若手の成長株#1村上駿斗らが躍動し、終盤になって調子を上げてきた。が、試合前日、ロールにアクシデントがあり、本来の力を発揮することはできなかった。豊通名古屋が勝利し、過去2シーズンの雪辱を果たすべく、ファイナル進出へと駒を進めた。
【3位決定戦】
大塚商会 ○77‐74● パスラボ山形
ある意味、この一戦がもっとも見応えがあったかも知れない。何としても連敗は避けたい両チームだけに、出だしから一進一退の好ゲームとなった。第1Pは大塚商会が22-19とリードすれば、第2P21-19、第3P17-16でパスラボ山形が挽回し、大塚商会1点リードで最終ピリオドへ。
迎えた第4P、出だしは大塚商会#91落合が連続得点。一方のパスラボ山形は#1村上がこのピリオドだけで9得点の活躍を見せ、何度も同点となる場面が……残り3分、66-66の同点から6点を連取した大塚商会がその差を守って逃げ切った。
「セミファイナルで負けたのは東京EXの経験が我々より上回っていたから。気持ちの部分で、プレーオフという大事な試合に臨む準備ができていたのが相手の方かな、と思います。悔しいですけど、個人的にはシーズンを通しては満足できる結果を得たというか、チームとしても成長を感じています。
プレータイムが延びたこともそうですし、勝負どころで(ボールを)任されることも増えました。信頼を得られたというか、プレーの幅が広がったと実感しています。インサイドで外国籍選手とマッチアップしたり、アウトサイドでは小柄な選手に付いたりして、その対応を工夫できるようになりました。
でかい相手だと外に引っ張り出して勝負することや、小さい相手ならミスマッチを活かす、あるいはスピードで負けないように……とにかく、大事な局面でボールを託してくれたのが嬉しかったですし、成長できた要因だと感じています。まだまだ足りないところがありますが、それを埋めるために必要なシーズンだったですし、次に活かしたいと思います。今ままではダメだし、もっと武器を増やさければなりません。ゼッタイもっと上手くなりたいし、成長できると思っています。これからもストリートでの活躍も含め、もっともっとさまざまなステージでトライしたいですね」(大塚商会 #91 落合 知也)
「決してベストなチーム状況ではなかったと思いますが、プレーオフに出場できたことは大きな収穫でした。ただ、メンバー的には優勝を狙えると思ってやってきたので、この結果(4位)には満足していません。
個人として振り返れば、今シーズンはシュート力やマッチアップの相手との駆け引きなど、多くのことを学べたと思います。次は(オフには)もっとドリブルのスキルを身に付けて、ボールを運べるようになりたいですし、ピック&ロールから崩していける選手になりたいと思っています。
次の目標は、B.LEAGUEで『B1』に昇格すること。日本代表でもプレーしたいですし(代表候補に挙がった経験はありますが)、そこはチャレンジャーの気持ちです。年齢は関係なく『プロ』ですから、周りの選手たちと同じように、日本代表を大きな目標に置いて頑張りたいと思います。
『スラムダンク奨学生』ということで、相手チームからはいろいろと声が飛んできますが(笑)、存在を知ってくれているんだと思って、それプラスに考えしっかりプレーしなければいけないと思っています。井上(雄彦)先生からも激励の言葉をいただいていますし、ずっと応援してくださっているので励みになります。期待に沿える選手になれるよう頑張ります!」(パスラボ山形 #1 村上 駿斗)
【ファイナル】
東京EX ○89‐70● 豊通名古屋
連覇を狙う東京EXだが、対戦相手の豊通名古屋には分が悪いままレギュラーシーズンを終えていた。通算成績1勝3敗で負け越し、総得点「276」に対し総失点「327」と、勝機を見出すのは難しいと思えた。
ところが、先手必勝! 第1P26-19、第2P19-15とリードしたが、前半だけで10本の3P(10/22)を決めると、後半も東京EXペース。第4Pにも5本の3Pを高確率(5/7)で決め、レギュラーシーズン3位から見事な巻き返しで三連覇を達成した。
プレーオフのMVPに選ばれたのは#18飛田浩明。2試合で9本(9/16)の3Pを含む42得点、プレータイムもチーム一で文句なしの受賞となった。
「苦しい展開でしたが、『諦めずに、気持ちを切らさないように戦おう』と、みんなで決めたことを守ってプレーしてくれました。3年間、ずっとそうでしたし、MVPの飛田も、昨年のベスト5の狩野も、この試合は石田選手もそうですが、今日はみんなの勝負強さが出たのが良かったと思います。
豊通さんはサイズがあるので、一番避けたいのはトランジションで持って行かれること。機動力のある3人のガードがコートにいる時は特に要注意です。また、高さのある相手に対して、リバウンドを競り負けない。みんなが、リバウンドに絡んでいく気持ちを持って、(ボールを)取ったらブレイクに走ることを徹底しました。
オフェンスに関しては、『動くプレー』を選択しようと。相手には高さがあるので、我々は機動力を活かしたプレー、2人で攻める2メンゲームなどを意識しようと指示しました。アウトサイドに関しては、空いたらシュートを打とうと。アウトサイドのシュートが爆発しないと、そうそう勝てる相手ではありません。思い切り打つ意識を強調しました。
ハーフタイムの指示も、(シュートが)当たっていたので、相手のディフェンスがどうであれ、中を攻めなければいけないかなという意識を持たずに、『空いたら打つ』これを徹底しました。
短期決戦ですから、どっちが先に主導権を握るかが重要になります。セミファイナルもそうでしたが、追い掛ける展開ではなく、先行することを重視しました。その通りに上手くいったと思います」。(東京EX 田方 慎哉ヘッドコーチ)
「優勝は狙っていましたが、MVPは狙っていたわけではありません(笑)。短期決戦ですから、目の前が空いたら、また、良いセレクションだったら思い切って打つというのがセオリーだと思います。昨日もそうですし、今日も最高の出だしだったと思います。みんなの調子が良かったので、(自分が決めなければという)プレッシャーはありませんでしたし、プレーを楽しめました。昨年一昨年と勝っていますから、自分なりに自信はありました。他の選手はわかりませんけど(笑)。
今シーズンは、外国籍選手が若いということもあって、なかなかアジャストできませんでしたが、徐々に持ち味を発揮してくれたと思います。周りの選手も彼らのことがわかってきて、いいプレーが出せるようなったことが勝因のひとつだと感じています。日本人選手は3年間、一緒にプレーしていますから、誰がどう動いて、どんなプレーをするかよくわかっています。それは大きな強みです。来シーズンはもっと上を目指してガンバリマス」(東京EX#18 飛田浩明)
■信頼が生んだチームワークの勝利
ファイナル終了後のインタビューでは、2人(田方HC、飛田選手)ともチームワークの良さを強調した。日本人選手はチーム創設以来、ほぼ同じ顔触れであり、新たに迎えた外国籍選手は母国・インドで5年間一緒にプレーしてきた間柄だという。後日、改めて東京EXの選手たちに今シーズンを振り返ってもらった。
「毎年毎年、(優勝は)嬉しいんですけど、三連覇というのはなかなかできないので特に嬉しかったですね。苦しいシーズンでしたし、個人的にも最後の節でケガをしてしまい(左の足首)、1週間練習ができませんでした。痛み止めを打ちながら、何とかファイナルに出場できて……最後、優勝がほぼ決まってから交代でベンチに下がりましたが、(涙は)ガマンできなかったですね。コートに立てないと思っていたのに、プレーすることができたので。
エクセレンスの魅力ですか!? メンバー同士でも話しますが、コートの5人だったり、ベンチのメンバーだったり、プレーオフに来た4チームの中で最も雰囲気が良かったという自負があります。誰かが倒れたら、すぐに誰かが起こしに行くし、ゲームの流れが悪くなっても、ベンチは最後まで盛り上がってサポートする。そういう一体感が楽しいですし、ここでやっていて良かったなと感じるところです」(#32狩野祐介)
「チームが家族のようだったので、とても楽しくプレーできました。また戻ってきて一緒に戦いたいと思っています。ヘッドコーチやチームメイトのサポート、ファンの応援があって楽しめたので、ぜひまた戻ってきたいと思っています。気候や環境などは、(インドと)あまり変わりませんが、日本人は親切なので、とても安全で暮らしやすいと感じました」(#4アムジョード“AJ”シング)
「プロとして、1年間プレーしたのは初めての経験だったのでとても良かったです。また、ここに戻ってきたいです。家族のようなチームで、楽しいシーズンでした。環境などはあまり変わらず気になりませんでしたが、食べ物や言語(言葉)が違うので戸惑うことはありました(笑)。でも、日本は安全なところで気に入っています」(#10アムリードパール“AP”シング)
「連覇中のキャプテン就任というのは、正直、不安がありました。自分はそういう(キャプテンという)キャラではないし、断っていたんですが、まだまだ若いチームなので、その中で中堅というか、自分がやるべきなのかなと自覚をし始めて引き受けることにしたんです。厳しい戦いが続いて大変なこともありましたが、今は連覇を達成できてホッとしています。声に出して伝えるタイプではないので、スタートから起用されてプレーでみんなを引っ張っていければ、と思っていました。結果、その通りのシーズンになったかな、と(笑)。特にファイナルはすごく気合が入って、自分も点を取りに行かなきゃ、と思って臨みました。出だしが好調だったので、みんなが乗れたと思います。
改めてこのチームを振り返ると、3年間(日本人選手が)代わらずやってこられたのは大きいです。3年間一緒にやった分、チームワークはリーグ一だと思いますし、三連覇も達成できました。それはこのメンバーだからこそだと思っています。
僕自身、チーム創設時に声を掛けていただき、脱サラして参加しました。思い切った決断でしたが、三連覇という結果に結びついたわけですから、“最高の決断”になりましたね。B.LEAGUEについてはまだ実感がありませんが、試合数が増え、さまざまなチームと対戦できるようになるので楽しみですね」(キャプテン#8西山達哉)
[NBDL 2015-2016 最終順位]
優 勝:東京エクセレンス
準優勝:豊田通商ファイティングイーグルス名古屋
3 位:大塚商会アルファーズ
4 位:パスラボ山形ワイヴァンズ
5 位:アースフレンズ東京Z
6 位:東京八王子トレインズ
7 位:アイシン・エィ・ダブリュ アレイオンズ安城
8 位:東京海上日動ビッグブルー
9 位:レノヴァ鹿児島
10 位:豊田合成スコーピオンズ
[NBDL 2015-2016 アウォード 表彰受賞者]
プレーオフMVP:飛田 浩明(東京EX#18)
レギュラーシーズンMVP:大塚 勇人(豊通名古屋#6)
ベスト5/G:大塚 勇人(豊通名古屋#6)
G/F:狩野 祐介(東京EX#32)
F:森川 正明(豊田合成#6)
F/C:落合 知也(大塚商会#91)
C:ソロモン・アラビー(豊通名古屋#21)
ルーキー・オブ・ザ・イヤー:杉本 慶(豊通名古屋#10)
コーチ・オブ・ザ・イヤー:田方 慎哉(東京EX)
レフェリー・オブ・ザ・イヤー:細田 知宏
[NBDL 2015-2016 リーダーズ]
得点:ルーク・エヴァンス(鹿児島#3)Avg.24.29点
アシスト:鮫島 和人(鹿児島#11)Avg.6.14本
リバウンド:ソロモン・アラビー(豊通名古屋#21)Avg.14.65本
フィールドゴール成功率:ジャスティン・ヘラルド(大塚商会#23)Avg.62.39%
フリースロー成功率:熊澤 恭平(アイシンAW#55)Avg.86.87%
3Pシュート成功率:鳴海 亮(東京八王子#30)Avg.40.66%
スティール:田中 健(東京海上日動#40)Avg.2.75本
ブロックショット:ソロモン・アラビー(豊通名古屋#21)Avg.2.19本
NBDLオフィシャルサイト ⇒ http://www.nbl.or.jp/nbdl/